白粉花
□嘘つき
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『あれって‥‥‥』
そう言った蒼空の視線の先には火神君にかけよる一人の女性……いや、カントクの姿があった。
そういえば、この間じゃんけんで負けた火神君が部活の備品を買うのにカントクに付き添うことになったっけ。
僕から見たら、ただの部活の先輩と後輩にしか見えない。
けど、カントクを知らない蒼空には彼女に見えても仕方がない。
一言いってやればいい、あの人は部活の先輩だと。
恋人なんかじゃないんだと。
でも僕は言えなかった。
………いや、言わなかったんだ。
自分の弱さに負けた僕は、ほんとに卑怯だと思った。
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