過去拍手集

□距離が近いよ
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「ちょっとこの状態で指先を動かしてみてくれる?」
「わかった。」
 メンテナンスルーム。その名が示す通り、俺たちが定期的に身体を見てもらう場所だ。
「押さえてる場所に違和感はある?」
「いや、問題ない。」
 なぜか俺の視界には向かい合って手を握り合っている愛しの彼女とハインリヒの姿が映っている。俺はというと、ベッドに横になってギルモア博士を待っている。
 まあ仕方がないということはわかる。何せこの前片足を吹っ飛ばしたばかりだ。正直、彼女の手に負えるメンテじゃないからギルモア博士が担当するってこともわかってる。
 で、俺に博士が付きっきりになるから今日メンテ予定だったハインリヒに彼女が付きっきりになるのもわかる。
「じゃあ次、肩から腕にかけて見せてね。」
「ああ。」
 だけど!わかるから許容できるかって言われたらそんなのは別の話だ。何だって目の前で好いてる女が他の男とくっついてるとこ見なきゃいけねーんだよ!
「…大丈夫みたいね。自分で気になるところはない?」
「敢えて言うならあっちから俺を睨みつけてくるあいつが気になるんだが。」
「え?」
 こっちを向く彼女から反射的に視線をそらす。
ハインリヒの奴、余計なこと言いやがって。
「どうしたのジェット?どこか痛いの?」
 彼女が心配そうに聞いてくる。その声自体はとてもありがたいし嬉しいんだが、
「なんでもねーよ。」
 そのハインリヒの腕を早いとこ離してもらいたいだけだよ。
「もうちょっと我慢してて。おじさますぐ来ると思うから。」
「…わかってるよ。」
 正直、今までは彼女一人でメンテ出来るほどの腕がなかったからこういうことはなかった。メンテだって博士と彼女の二人で一日一人のペースだった。だが、最近では日常的なケアなら彼女一人でやってのけるらしい。
 で、自慢じゃないが俺は負傷率が高い方だ。だからこそメンテも難易度が上がってしまって彼女の手には負えないんだと。
にやにや笑うハインリヒを見ていると今度からは少しばかり戦い方を考えてみるか、なんて思ってしまう。…いやもちろん、博士たちの負担を減らすためにな。

 ま、彼女のことだ。そんなに遠くないうちに俺のメンテも一人で出来るくらいに腕を上げてくれるだろう。
 とりあえず今日のところは早いとこハインリヒの世話を終わってもらえないかね。精神衛生上良くないんだよ。ほんとに。



*タイトルはお題配布サイト≪プレゼント≫様のやきもちの盛り合わせよりいただきました。

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