過去拍手集

□天上に住まう誰かに感謝する
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 その日、ギルモア研究所には多くの仲間が滞在していた。
 夕食とその片付けが済み、自由時間を迎えた彼らはそれぞれくつろぎの時間を過ごしていた。
 もちろん彼女のその例にもれなかったが、少し違うのはそのくつろぎの場所が屋外であったことだ。
「わあ…やっぱり綺麗…」
 見上げた夜空には星空と、いつもよりもだいぶ大きく明るい満月。
 月が最も地球に近づくその日にのみ観測できるスーパームーン。密かにその日を楽しみに待っていた身としても十分に満足のいく好天だった。
 大きさもさることながら、最大級に増すと言われている月光を十分に堪能するために選らんだその場所が大正解だったことを自画自賛しながら、少しばかり申し訳ない気持ちが頭をよぎる。
「みんなに内緒にしちゃってちょっと申し訳ないかな。」
 晴れるかどうかわからなかったこともあるし、生まれて初めて目にするそれを今回ばかりは一人占めしたかったという我儘から、この特等席に座っているのは彼女一人だった。
「こんなに綺麗だと思わなかった…次の時もこれくらい晴れてくれればいいんだけど。」
「へえ、次っていつだよ。」
「次は年が明けてから…」
 そこまで呟いてから彼女はぴたりと動きを止める。
 おそるおそる振り返ったそこには思った通り、見慣れた彼の姿が合った。
「あ、あら、ジェット。どうしたのこんなところで。」
「その台詞、そっくりそのまま返してやるよ。」
 ひきつったような呆れたような表情で大きくため息をついてから、ジェットが叫んだ。
「このバカ!姿が見えねえと思ったら夜中に屋根の上で何やってんだ、お前は!」
「ごめんなさーい!どうしてもいい場所で見たかったの!」


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