●短編小説 vol.2●
□曇のち雨のち……
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私は本を読み出すと…
周りの音も視界も…なにもかもシャットアウトする癖があった…
…
そう…今日も同じ……
……
パッと気付くと…1時間は軽くすぎていて……
…
目の前にいたさっきの人もいなくなっていた……
……
あれ…?
小さな本がポツンと残された机……
私は帰り支度をしてカバンを持つと…
その本をそっと手に取ってレジへと向かった……
店長『菜緒ちゃんもう帰るのかい?』
毎週のように通ってるうちに自然と仲良くなった店長…
菜緒『はい!
あっそうだ!これ!
さっきあそこに座ってた人が忘れてったみたい…』
私の指差す方を見て…
店長『あぁ章大かぁー!
いまさっき出たばっかなんだけどなぁー
…持ってってやりたいけど…俺は店があるし…』
……
……………
そっかぁ…
菜緒『…じゃあ…私が持っていきましょうか…?』
店長『おう!本当に!?
じゃあ頼んだ!
たぶん駅と逆の方に行ったと思うから!』
そう言って私をドアの方まで見送ってくれる…
カランカラン…
ドアを開けると……
どんより曇り空……
……
店長『あぁー降ってきそうだなぁー
…菜緒ちゃん!ちょっと待ってね!』
店長は店の奥から傘を持ってきて……
笑顔で手渡した…
菜緒『ありがとうー
じゃあ行ってきますねー』
店長『はいはい。
頼んだよー』