●短編小説 vol.2●
□曇のち雨のち……
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カランカラン……
懐かしさを感じるこの音が出迎えてくれるこの場所は…
私のお気に入りのカフェ……
…
駅から少し離れただけなのに…
周りには緑が溢れてなんか旅にでも来たような感覚になる…
あっ例えるならトトロに出てきそうな場所にある落ち着いた店…
私は今日も…ここでゆっくり紅茶を飲みながら本を読んでいた……
…
カランカラン……
またあの音が聞こえて…
ちらっと入り口を見ると……
……
安田『こんにちはー』
とにこやかに登場したその人は……
…
店長と楽しげに会話をしてから…
私の前にあるソファー席に座った……
鞄から小さな本を取り出すと…
…じっくりと読み出す……
…
私はなぜか…
その人に目を奪われた…
…
だって…
その人の目は….すごく優しさに溢れてて….
本にまで優しい眼差しを向けてるように感じたから……
.……
なんだろう…この感じ……
……
私はじーっと、その人を見てしまった…
…
すると…
私の視線を感じたのか…
その人は…ちらっとこちらを見て……
パチッと目が合う……
.……
あ….っ….
どうしよ…
変な人って思われたかな…
…
なんて考えていると…
その人は….
にこっと笑って…
小さく頭を下げた…
……
やっぱり…
誰にでも…優しい目で見るんだ……
私も自然と笑顔になって…
頭を下げて……
……
お互いに…本に視線を移した……