●短編小説 vol.1●
□ツブサニコイ
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菜緒『ねぇー…忠義
…好き?』
忠義『ん…?なにが?』
菜緒『なんでもない…』
忠義『うそうそ。好きやで…』
俺の彼女は最近会う度に何度も聞いてくる…
好き?…私のこと好きなの?…
って…
もうすぐ付き合うようになって一年…
もしかしたら菜緒は俺と別れたいのかもしれない…
…………………………………
菜緒との出会いは俺にとって運命的な物だった…
あるドラマの撮影で地方に行った時…
時間が空いたので、知らない土地を散策していた時だった…
忠義『あぁ!海やぁー!ちょっと海見てってもええ?』
マネージャー『あぁー…僕ちょっと呼ばれてるんで戻りますね!撮影2時間後に再開なんでよろしくです!』
忠義『はいはぁい!』
はぁ…海なんて久しぶりに見たわ…
癒されるなぁー…
…
…?
俺は砂浜に1人座る女の子が目に入った…
泣いてる?…
ここはそーっとしとくべきやな…
よし…退散しよ…
……
!?!?
忠義『うわぁぁぁぁー!!!!』
ッッッドッスーーン!!!
なぜか穴に思いっきり落っこちた…
菜緒『だ…大丈夫ですか?』
上を見上げると…
拭ききれてない涙がキラキラと光る顔で手を差し出してくる女の子…
俺は一瞬でその子に心を奪われた…
夏なのに白い肌…
細い腕…指先…
涙がまだ目や頬に残っているのに俺を心配して来てくれた女の子…
俺は女の子をジッと見つめて止まってしまっていた…
菜緒『起き上がれますか?』
心配そうに俺に聞く女の子の声にようやくハッと我に返って…
女の子の差し出す手をゆっくり握った…
菜緒『んーっ』
一生懸命引っ張ってくれてるけど、本当は全然1人で起きれんねん…
ようやく立ち上がると…
下から見ていた時より背が小さくて可愛い…
忠義『ありがとう…手、砂ついたやろ?』
菜緒『大丈夫です!それより服すごいことに…』
忠義『うわ!ほんまや!!衣装さんに怒られるーー!なんでこんなとこ穴あったんやろ。』
菜緒『さっき子供達が落とし穴作ってたんですよ』
忠義『そうなんやー。まんまと引っかかったわー!はっはっはっ』
笑いだす俺につられて女の子も笑い出した…
女の子の笑顔は俺の胸を鷲掴みにした…
パッパッと服の砂を払って取っていると…
菜緒『背中もすごいです。払ってもいいですか?』
忠義『あぁ!お願いします。すんません…』
優しく背中を払ってくれる女の子…
胸の高鳴りが鳴り止まない…
菜緒『上の服泥付いちゃって取れないですね…』
忠義『ほんまですかー?どうしよ。絶対怒られるわー』
菜緒『すぐ近くにコインランドリーありますよ!』
忠義『コインランドリー?どこですか?』
菜緒『えっと…あそこの角曲がったところですね』
忠義『あぁ…ありがとうございます。』
菜緒『気を付けてくださいね。それじゃあ…』
ニコッと笑って頭を下げて背を向けて歩いていく女の子…
あかん…行ってしまう…
どうしよ…どうしよ…
忠義『あの!!!』
俺の声にゆっくり振り返る女の子…
菜緒『はい…?』
忠義『やっぱりどこかよくわからなくて…時間ありますか?』
女の子はまたニコッと笑って…
菜緒『大丈夫ですよ!』
と言った。