海を愛する

□旅-1
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『(何でこうなったんだ…?)』



今俺はかの有名な白髭海賊団の船に乗っている。

もっと詳しく言えば、
俺は何故か白髭の前で正座をして、周りを船員達に囲まれている。


いったい俺が何をしたと言うのだ。



白「お前ェ、名は?」


『……レオンだ』


白「レオン、か…良い名だな」



酒瓶片手に質問する白髭に、ますます意味が分からない。


白「お前ェ、何で海賊だけじゃなく町の奴らまでヤったんだァ?」


白髭の優しく語りかける様な声に、俺は眉を寄せる。

そんな喋り方するな…。



白「言えねぇか?」


胸がチクチクする…。



『…仕返し、』


俺の言葉に、周りの奴らの目つきが鋭くなる。

そうだ…その目で見ていればいい。



白「何かされたのか?」


『あんな奴ら、別に死のうが生きようが関係ない。』


「お前親が殺されてもどうも思わねェのかよッ!」



男の声に続く様に次々と罵声が飛び交う。



『……っ‥』


煩い……。


煩い黙れ……。



ダンッ!


『うるっせェェェェエエッッッ!!』



立ち上がり叫んだ俺の声に、周りは一気に静まり返る。


『…ハァ、‥ハァ…っ、俺には……』


“親”とか“大切のもの”とか…。


『…ねェんだよ、そんなモノ…っ』



全て何も与えられなかった…。



俺は近くに置いてあった液体が入った樽を頭から被り返り血を流す。


俺の突然の行動に止めに入ろうと動いた奴がいたが、それも俺の髪を見た瞬間に動きを止めた。



俺は白髭や周りの奴らを睨み付けながら口を開いた。


『…分かったか!俺は忌み子なんだよ!!生まれて直ぐに親や周りの奴から嫌々育てられた!4歳の頃からは牢屋に入れられて蔑まれた!!悪魔の実を食べてからは余計にだ!

それどころか、島を襲う奴らを追い払う為にも使われるようになった!
島の奴らなんてそれが当たり前になっていた!』



俺は生まれて初めて怒鳴った。

身体が言うことを聞かなくて…どうすれば良いのか分からない…。



『どんなに島を助けようと、返ってきたのは化け物を見る様な目と罵声だけ!終いにはストレス解消に暴力もふるわれた!!』



目から勝手に出て来る雫…。



『こんな事されても我慢しろって言うのか?!ただ耐えろって言うのか?!俺は何で生まれてきた!何で辛い思いをしなければならない!!』


俺はただ……



『…っ‥お、れは…ただ』



“アイ”…を、知りたかった…。


白「あぁ…、もう良い」



俺は白髭に優しく抱きしめられた。


『…っ、俺はただ……』



愛されたかった…


ただ、それだけ……なんだ。














初めて感じた優しい温もりに

俺は目を閉じた…。


これが夢じゃない事を祈りながら……。




-旅人と白鯨 END-
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