海を愛する
□旅-3
3ページ/3ページ
*主 side*
何なんだ…本当に。
イゾウが笑う度に…、白髭の話をする度に…
胸が締め付けられるみたいに痛い…。
「表面では平気そうにしてるくせに、その胸ん中は傷だらけで誰かに助けを求めてんだ」
先程言われた言葉が俺の頭の中をグルグルとまわる…。
助け…?
俺は何を助けてもらいたい。
「これから先が聞きてぇって言うんなら、オヤジに聞きな」
白髭に聞けば、この胸のイタミが何なのか分かるのか…?
「お前が欲しがってる答えを聞かせてくれるはずだ」
俺が欲しがってる…、答え…。
足元見て歩いていた俺に、突然何かに腕を掴まれた。
『ッ?!』
抵抗も出来ずに身体を引かれて“何か”に抱きしめられた。
嫌、“何か”と言うより“誰か”の間違いだろう…。
この感触は男だ…。
男の腕が俺に触れている。
白髭やマルコ、イゾウとは違う感覚…。
触れられたとこから血の気が引く様な…そんな感覚。
これは嫌と言う程経験している。
このままだとヤバい……
頭をフラッシュバックする過去の嫌な思い出。
組み伏せた俺を
欲情した獣の様な目で見下ろす男の目……
俺に伸びる手……
荒い呼吸……
『…ャっ…』
遠くで俺を呼ぶ声…
『…ャ、だ…!』
耳にかかる生暖かい息…
『‥ャめ…、』
そん目で俺を見るな…
『…はな、…し‥ッ』
その手で俺に触るな…
その目で俺を見るな…
――***…
『ぃっ…ャアアァァァアッ!!』
俺の名を呼ぶな
お願いたがら…
次に襲ったのは、
肉を切り裂く感触と
誰かの悲痛の叫びと
血の匂い
俺の視界は赤に染まった…。
-旅人のイタミ END-