海を愛する
□旅ー5
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――守ってやるから…
そんなの、初めて言われた…。
だからかもしれない…
涙が出て来るのは…。
白髭の時の様な優しく温もりに、
俺は目を閉じた――…
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「***…」
気色悪い。
その声で俺の名を呼ぶな。
『お兄さん、離して下さい』
「***、二人の時は名前を呼ぶように言ってるだろ?」
誰がお前の名前なんか呼ぶものか。
それでも顔に出ない様に気を付けながら、
その要求をやんわりと断る。
「***…、***…」
何度も俺の名を呟きながら、俺を抱き締める手に力が入った。
食事の準備が出来ないから止めて欲しい。
帰って来て早々俺を後ろから抱き締めて、何が楽しいと言うのだ。
男同士で抱き合って、気持ち悪いだけではないか。
首筋に置かれた顔は狙ってか知らないが、喋る度に耳や首に息がかかる。
「***…、ヤりたい」
その言葉に、俺に否定する事は出来ない。
否定すればする程酷く長くされる。
だが、素直に従うのは腹が立つ。
『お兄さん、時と場所を考えて下さい。』
「俺は今すぐ***とヤりたい」
俺の言葉など聞かないこの男は服の中に手を入れ、腹や胸などを撫で回す。
俺が好きなら俺の言い分を聞いて欲しい。
この行為は嫌いだ。
痛いし疲れるし、俺に利益がない。
「***…」
甘い声で名を呼ばれたくない…。
その手で俺に触れないで…。
『…ん、‥ャめっ』
勝手に出る聲を、聞かないで…。
「***、好きだ」
こんな時だけ“好き”だなんて言わないで…。
その全てに、腹が立ち、涙が溢れた―。
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