神に愛される
□たった一つだけの御願いです
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キラキラと輝いていた青い海は、夜空に浮かぶ星を映し出し、朝とは違う輝きを放っていた。
気温も朝よりは下がり、心地良く感じる…。
ぼー…っと、甲板の端で夜空を見上げていると、遠くからサッチさんの声がした。
どおやら俺を呼んでいるらしいので、声がした方を振り返る。
『どうしたんですかー?』
「風呂空いて来たからアキも一緒にどうだー?」
白鬚海賊団になって驚いたのだが、人数が多いせいか、ここの風呂はデカイのだ。大浴場と言ってもいい程に。
『あー…今日はシャワーにするんで、俺はいいです』
で、大浴場とは別にシャワー室が付いている。
ホント便利だよね。俺にとっては特に―…。
俺の言葉に、サッチさんは分かったとだけ返して、4番隊の人達と一緒に風呂場へ向かった。
人付き合い悪いとか思わてンのかなぁ…。
でもしょうがないんだよね。コレだけは――。
心地よい風が頬を掠めバンダナから出てる髪を揺らす…俺の嫌いな、髪を…。
*********
見張り番の人以外寝静まった夜中。
俺は人気を避けてこそこそと音をたてない様に目的地へと歩みを進めていた。
『……誰も居ないよな?』
少し開けた扉の隙間から中の様子を伺い、無人である事を確認する。
それが分かれば俺は半開きだった扉を普通に開け中へと入る。
それから着々と衣服を脱ぎ、棚に入ってあるカゴへと放り込む。
ああ、言い忘れていたが俺の目的地は此処。シャワー室である。
何故わざわざシャワー入るだけでこうも用心深く人を避けているのか、それにはちゃんと訳がある―…。
最後のバンダナを取ると、纏めていた髪が宙を舞う様にサラサラと揺れながら落ちる。
腰にタオルを巻き、一番奥の個室へと行く。
個室に入れば備え付けの鏡に自然と視線がいき、俺の容姿が映し出される。
金に近い黒い髪に青い瞳…。
コレの所為で、俺は誰かと風呂に入るのを避けている。
誰にも見られたくない。見られてはいけない。
だから今まで隠してた。
髪を黒に染め、黒のカラコンして。
だけど何故か、何度も黒に染めても一週間も経たないうちに髪の色が脱ける。
髪質も痛まず、綺麗な金色のまま。
《――…気持ち悪いっ、人様の前でそんな姿晒さないで…っ!!》
《――…アンタなんてあたしの子じゃない!あたし達を巻き込まないでよ!!》
ずっと前に言われた母さんの言葉。
口癖の様に言っていた気がする程言われ続け、俺は人に髪や眼を見られるのを嫌った。
母さんの姿なんて覚えてない。勿論父さんも。
だけど、母さんのその言葉、その聲は驚く程鮮明に覚えているのだ…。嫌な程に……。
『…………っ』
平凡とはかけ離れたこの容姿に、俺は無意識のうちに奥歯を噛み締めていた―。
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