海を愛する

□旅-1
2ページ/3ページ



次に停泊するはずだった島の変わりように、その場に居た誰もが息を呑んだ。



島の住人どころか島を襲ったであろう海賊達の亡骸に、燃え盛る炎…。


周りを見渡せば鋭い物で切り裂かれた後がそこらじゅうにあった。


まるで怪物でも暴れた様な有り様に、生存者など居るのだろうか…。



「…っ、隊長格は生存者の確認と犯人探し!他の者は5人一組で消化と生存者探し!!」


白髭海賊団一番隊隊長・マルコの声に、周りの者は我に帰り言われたとおりに動く。



前に偵察しに来た時の活気ある町の面影は今は無い。


いったい誰が…



『何だ……まだ居たのか…』


その場に居た者は声が聞こえた方を振り返ると、其処には顔が見えない程伸ばされた赤い髪に、ボロボロの服を着た少年が立っていた。


「…全部お前がやったのかよい」


少し覇気を出しながら質問するマルコに、少年は首を横に振った。


『海賊はヤったが住人は海賊だ。』



覇気を出しているのにも関わらず、少年は徐々に近付く。


『まぁ、少し残って居た住人もヤったかもしれない』



顔色一つ変えず言う少年に、四番隊隊長・サッチが口を開いた。



「…お前、此処に居た住人もヤったのか?」


サッチの言葉に少年は辺りを見渡し、『かもな』と返した。


サッチ「身内もヤったのか…」


『入っているかもな』



その言葉を聞いた隊長格と船員達は戦闘大勢になった。


白髭海賊団は血が繋がっていないからこそ、家族を大切にする。

それを血が繋がっているであろう者が、顔色一つ変えずに“殺した”と言うのだ。



マルコ「……それは本気で言ってるのかい‥?」


『……ああ、』

「ふっざけんなァァァアアッ!」



どこかの隊の奴が数人少年に切りかかった。


それに少年は必要最低限の動きでかわす。

それに苛立った一人が小柄な少年を殴り飛ばした。


避けれたはずの少年はそれを顔で受け止め、少しよろけた。


それは誰もが不思議に思った。避けれたはずなのに何故?と…。



白髭海賊団は少年を見つめていた。


『………』


少年はゆっくりと顔を上げると、たまたまマルコと眼があう。


その瞳にマルコは不覚にもドキリと、胸が高鳴った。



長い髪から覗く澄んだ青い瞳…。

それは人を殺めた者とは思えない程に、青く凛としていた。



「どうしたァ…お前ェら」


聞き慣れた声に、その場の者は勢いよく振り返った。


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ