海を愛する
□旅-1
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次に停泊するはずだった島の変わりように、その場に居た誰もが息を呑んだ。
島の住人どころか島を襲ったであろう海賊達の亡骸に、燃え盛る炎…。
周りを見渡せば鋭い物で切り裂かれた後がそこらじゅうにあった。
まるで怪物でも暴れた様な有り様に、生存者など居るのだろうか…。
「…っ、隊長格は生存者の確認と犯人探し!他の者は5人一組で消化と生存者探し!!」
白髭海賊団一番隊隊長・マルコの声に、周りの者は我に帰り言われたとおりに動く。
前に偵察しに来た時の活気ある町の面影は今は無い。
いったい誰が…
『何だ……まだ居たのか…』
その場に居た者は声が聞こえた方を振り返ると、其処には顔が見えない程伸ばされた赤い髪に、ボロボロの服を着た少年が立っていた。
「…全部お前がやったのかよい」
少し覇気を出しながら質問するマルコに、少年は首を横に振った。
『海賊はヤったが住人は海賊だ。』
覇気を出しているのにも関わらず、少年は徐々に近付く。
『まぁ、少し残って居た住人もヤったかもしれない』
顔色一つ変えず言う少年に、四番隊隊長・サッチが口を開いた。
「…お前、此処に居た住人もヤったのか?」
サッチの言葉に少年は辺りを見渡し、『かもな』と返した。
サッチ「身内もヤったのか…」
『入っているかもな』
その言葉を聞いた隊長格と船員達は戦闘大勢になった。
白髭海賊団は血が繋がっていないからこそ、家族を大切にする。
それを血が繋がっているであろう者が、顔色一つ変えずに“殺した”と言うのだ。
マルコ「……それは本気で言ってるのかい‥?」
『……ああ、』
「ふっざけんなァァァアアッ!」
どこかの隊の奴が数人少年に切りかかった。
それに少年は必要最低限の動きでかわす。
それに苛立った一人が小柄な少年を殴り飛ばした。
避けれたはずの少年はそれを顔で受け止め、少しよろけた。
それは誰もが不思議に思った。避けれたはずなのに何故?と…。
白髭海賊団は少年を見つめていた。
『………』
少年はゆっくりと顔を上げると、たまたまマルコと眼があう。
その瞳にマルコは不覚にもドキリと、胸が高鳴った。
長い髪から覗く澄んだ青い瞳…。
それは人を殺めた者とは思えない程に、青く凛としていた。
「どうしたァ…お前ェら」
聞き慣れた声に、その場の者は勢いよく振り返った。
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