押して引いて
□転入しました
1ページ/2ページ
「おい、今日このクラスに転校生くるぞ!」
西村が教室に入ってくるなりそう言いだした。
でも、クラスのみんなはさほど盛り上がらなかった。
「そんなの、もうみんな知ってるわよ。ほらあそこ、机一つ置いてあるし」
クラス委員の笹田が言う。
確かに俺も、西村が来る前にはもう登校してたからそれは知っていた。
でも、わからないのは、その子の性別。
俺が教室に入った時、男子はかわいい女子がいいとか、女子はかっこいい男子がいいとか、そんな話題ばかりだった。
西村が来るまで。
「フッフッフ…お前らぁ、セーベツはわかんねーだろ」
「お前、知ってるのか!?」
西村のその一言で、教室内は沸いた。
正直いえば俺も少し気になる。
「ぃよぉーし、教えてやろう!」
「早く言えよ!」
西村が無駄に溜めてから、言った。
「女子だ!!」
その瞬間、先ほどとは比べ物にならないほどまた沸いた。
男子は喜び、女子は少しだけ肩を落としていた。
「お、おい、顔は見たのか!?」
「いや、背中しか見てねー」
なんだよー、とガッカリした男子たち。
結局わかったのは性別だけ。
SHRまでのおあずけとなった。
.