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□転入しました
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「おい、今日このクラスに転校生くるぞ!」


西村が教室に入ってくるなりそう言いだした。
でも、クラスのみんなはさほど盛り上がらなかった。


「そんなの、もうみんな知ってるわよ。ほらあそこ、机一つ置いてあるし」


クラス委員の笹田が言う。
確かに俺も、西村が来る前にはもう登校してたからそれは知っていた。

でも、わからないのは、その子の性別。
俺が教室に入った時、男子はかわいい女子がいいとか、女子はかっこいい男子がいいとか、そんな話題ばかりだった。

西村が来るまで。


「フッフッフ…お前らぁ、セーベツはわかんねーだろ」

「お前、知ってるのか!?」


西村のその一言で、教室内は沸いた。
正直いえば俺も少し気になる。


「ぃよぉーし、教えてやろう!」

「早く言えよ!」


西村が無駄に溜めてから、言った。


「女子だ!!」


その瞬間、先ほどとは比べ物にならないほどまた沸いた。

男子は喜び、女子は少しだけ肩を落としていた。


「お、おい、顔は見たのか!?」

「いや、背中しか見てねー」


なんだよー、とガッカリした男子たち。
結局わかったのは性別だけ。
SHRまでのおあずけとなった。




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