その拳を突き上げろ
□まさかの
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ホームルームも終わり、この学園での初めての放課後がやってきた。他のクラスメイトたちはぽつりぽつりと教室から出て行く。私も鞄を持って岳羽さんと帰ろうと彼女のもとへ向かった。
「よっ、転校生!」
が、岳羽さんの席の目前のところで声をかけられた。振り返ってみると、キャップを被ってヒゲを生やした男の子が立っていた。
「何か用?」
「自己紹介くらいさしてくれよ。オレは伊織順平。ジュンペーでいいぜ」
「順平くん」
「実はオレも中2ん時、転校でココ来てさ。転校生って、色々一人じゃ分かんねえじゃん?だから不安がってないかなってさ」
「まったく…。女の子と見りゃ馴れ馴れしくしてさー」
岳羽さんがいつの間にか横にいて会話に入ってきた。そうして、しばらく順平くんと話していた。
人懐っこい笑顔の順平くん。湊くんとは正反対の男の子だ。ふと彼のことを思い出して、教室を見渡す。湊くんはまだ座っていた。そんな彼のそばに岳羽さんが近づいて何か話している。
そして、二人がこちらにやってくる。
「紹介するね。彼も私たちと同じ寮に住むことになった有里湊くん」
「え、湊くんもなの?」
「一昨日にこっち来たんだ」
「あれ、もう知り合いだった?」
「うん、始業式の時にね」
まさか湊くんが同じ寮だとは。
「おいおい、オレも仲間に入れてくれよー」
「アンタは無理ねー。寮違うもん」
「ゆかりっちひでー」
「あっ、私部活あるから先に帰ってて。道分かるよね?」
「うん、大丈夫だよ。部活がんばって!」
「あ、ありがと。じゃあね」
パタパタと走っていく岳羽さん。
「じゃ、折角だし三人で帰りますかー?」
ハイテンションの順平くんがそう言った。私と湊くんは見合わせて小さく頷いた。
「いいよ、帰ろう!」
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