SHORT STORY

□跡部からの贈り物
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「なんや、美味しいやん」


人気のあまりない所でたこ焼きを黙々と食べる。厳しいと言っていたけれど味は美味しかった。外はカリっと、中はトロっと。たこも固くなくちゃんと噛み切れる。なんで売れないのだろう。


「…あれ」


最後の一個を食べようとしたとき、ふと視界に入ったのは1人佇む樺地だった。微動だにせずある一点をずっと見つめていた。
彼の視線を追うと、そこには女の人がいた。
白いキャペリンをかぶり、白いワンピースを着ていた。

声をかけようと立ち上がったが、樺地のそばによく知った人物が近づいてきていた。
跡部だ。2人は何やら話している。

少し冷めた最後の1個のたこ焼きを口に入れて、発泡スチロールを近くに設置されていたごみ箱へと捨てた。
もぐもぐと口を動かして、次はどこへ行こうかと考えていると跡部と目が合ってしまった。


「(…めんどくさ…)」


つかつかと近付いてくる跡部。このまま振り返って元陸上部の力を使って逃げてしまおうか。と、行動に移す前に奴はもう目の前に来ていた。


「おい」
「はいはい何でしょうか跡部サマ?」
「馬鹿にしてるだろ」
「滅相もごぜーませんとも」
「…ふっ、まあいい。樺地、お前は好きにしてろ」
「ウス」


そう言われた樺地は踵を返して去っていった。


「お前、今日1日俺様に付き合え」
「えー、嫌や!1人でのんびりしたいって!」
「却下だ」
「嫌や嫌や嫌やーー!」


襟元をひっ掴まれてそのまま引っ張られる。首締まってるから。


「ぐ、ぐるじい!!」
「なら大人しくついて来い」
「もー、わかったから!」


パッといきなり手を離されてそのまま後ろに倒れた。背中がじんじん痛い。


「あんた、私のこと女やと思ってないやろ!」
「女の扱いしてほしいのか?アーン?」
「ごめん結構やわ」


想像してみたらかなり気持ちの悪いことになった。全身に鳥肌が立った。
背中をさすりながら立ち上がる。


「んで?何すんの?」
「俺様の走りっぷりを見とけ」
「は?」



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