過去拍手

□冬の日
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鍛練の後

俺は急いで走った

ただ一人の

『愛しい人』

に会うために

きっと待っているだろう

俺がくるのを…





寒い中白い息を吐いて待っているお前を見つけた

走る俺を見つけ微笑むお前が愛しい

「鍛練お疲れ様。弦一郎」

「待たせてすまぬな…」

「ううん。走らなくてよかったのに。風邪ひいちゃうよ?」

そう言って俺の汗を拭いてくれる彼女の指先は



とても冷たかった



どれくらい俺を待っていたのだろう

俺は思わず彼女の手を握りしめた

「え!弦一郎?何?」

普段俺から手を繋いだりはしないから仕方ないとは思うが…

ここまで驚かれるのはどうかと思う

だが自分から繋いだ事を俺も自覚してしまった

「手が冷たいから…温めておるのだ!行くぞ!」

気付かれたくはない

俺の顔はきっと真っ赤だ

多分耳まで…



「弦一郎歩くの早い〜。手痛い〜」

しまった…

「すまぬ」

俺は歩幅を彼女に合わせ優しく手を握り直した

嬉しそうに握り返すしぐさに頬が緩む

この温もりを『幸せ』というのだろうな

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