降り積もる想いをのせて

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船に戻ってから、カンナは買ってもらった服をタンスにしまってから、食堂へと向かった。出航が間近となれば、コックも仕事も始まるということだ。特に、集まれと言われた訳でもないが、自然と厨房にはコックたちがちらほらと集まってきて、島で調達した食材やらの確認をして、次の航海でどういう風に使っていくかある程度決めたところで、改めて再度調達する必要のある食材を検討した。とりあえず、今回は買い足すものもないので、明日以降の流れを確認して、解散となった。

カンナは数人のコックと残ってしばらく、食材を保存しやすい状態に手を加えたりしていたが、徐々に他のコック達も散っていき、最後に厨房に残ったのはカンナ一人だった。時計を見ると、夜も遅くなっていて、そろそろ隊長達の会議も終わる頃だと思っていると、ギィと食堂の扉が開いて、マルコが入ってきた。

「お疲れ様です、マルコ隊長。」
「あぁ、いたのかい?」

マルコは片手に書類を持ち、厨房に立つカンナを見やった。

「コーヒーいれましょうか?」
「あぁ、頼むよい。」

マルコは会議が終わると大抵食堂に来て、コーヒーを飲むから、丁度準備していたコーヒーをマルコに出してあげた。

「毎回毎回悪いねい。」
「いえ、マルコ隊長こそお疲れ様です。」

マルコの前に濃厚な匂いを漂わせるコーヒーと一緒にマフィンが出されて、マルコがそれを見ると、カンナは先に口を開いた。

「ライムマフィンです。お疲れの後に丁度いいかと思いまして。」
「わざわざ作ったのかい?」
「いえ、キャスにお見舞いにさっき作って持って行ったんです。少し多めに作ったので、隊長たちにもお配りしようと思いまして。」
「そうか。…甘酸っぱくておいしいよい。」

マルコはマフィンを一口食べて、口に広がる酸味と甘みが絶妙に絡んで、丁度良い味で、コーヒーとも合っていて、にこりと笑った。
その様子にカンナも一安心して胸をなでおろした。

「サッチは部屋に戻ったからあとで持っていってやるといいよい。」

その言葉にカンナは息を呑んで、おずおずとマルコに目をやった。

「あ、の、私の気持ちってそんなにバレバレですか…?」

そう聞くと、マルコは一瞬目を見開いたが、すぐにくっ、と笑って、そういうつもりじゃなかったんだけどねい、と漏らした。

「ただ、サッチもカンナもお互い良い表情して話してるから、なんとなくねい…。」

マルコはそう言ってくれているが、カンナの気持ちには気付いているのだろう。わざわざ遠回しの表現をしているのは、カンナが慌てないで済むように。
そんな優しさが嬉しくて、カンナの表情も自然と綻ぶ。

「そ、うなんですか。自分ではよくわからなくて…。」
「あぁ。サッチと笑ってるときのカンナは本当に楽しそうだし、サッチもそんな風に見えるよい。助かるよい。」

助かる、の言葉にカンナは首をかしげる。

「普段あぁやって明るく振る舞ってるが、結構視野が広くてねい。隊員たちの様子をよく見てくれる。だが、周りに気を配ってる分、自分が安らぐ時っていうのが少なくてな。お前といる時はリラックスできてるみたいだよい。」
「お役に立ててるなら嬉しいです……。」

サッチと話してる時は大抵ドキドキしていて、サッチの様子が他の人とは違うことに全く気付いていなかったが、そんな風に周りから見えているとは思ってもいなかったし、サッチの役に立てているのかと思うと、本当に嬉しかった。
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