未知な世界へ

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意識しながらではあったが、ようやく見聞色の覇気を抑えられるようになって、外にまともに出れるようになった頃には、次の島まであと数日の距離になっていた。

明け方に起きた カンナはまだ人のいない外に出て、新鮮な空気を吸ってから目を閉じた。
一旦、心の円を大きくすると、眠っている者と動き始めている者が脳裏を走って、それを確認し終えると、円を小さくして、自分の中に納めた。

「おはようございます、白ひげさん。」
「グラララ、うまく使えるようになったじゃねぇか。」

くるり、と後ろを振り向くと白ひげが立っていて、 カンナを楽しそうに見下ろしていた。

「息子さんの指導が良かったからですよ。」
「そのほめ言葉は本人に言ってやれ。」
「いやですよ、調子に乗られても困ります。」

最初こそ、白ひげの存在に圧倒されたが、慣れてしまえばこれほど居心地のいい存在はなかった。
全てを包んで、全てを受け入れてくれる存在。
それは仲間ではない自分にまで及んでいる。

「あなたみたいな人が海賊だなんて不思議です。」

白ひげは真っ正面から見上げてくる娘を笑った。

「海賊なのにあったかい感じです。他の人達も皆、あったかいです。」
「俺達は家族だ。」

迷いのない言葉に カンナは口元がゆるんだ。
まるで自分と島の人達と同じ。
違うのは海か陸かだけ。あとは海賊という立場。

「お前、家族はいるのか?」

白ひげにしてはストレートな物言いに カンナは一瞬意をつかれた。

「血の繋がった、という意味では叔父が次の島にいます。両親は……どこにいるかわかりません。でも、島の人達は私の家族です。」

白ひげ同様に迷いのない発言に白ひげがにやり、と笑った。

「そう言えるなら、お前ぇは大丈夫だ。」
「……?」

白ひげの意図することが分からず、首をかしげたが、続々と甲板に出てきた隊員達に カンナは質問を返す機会を失ってしまった。

「おう、 カンナ!もう外出れるのか?」
「オヤジ、おはよう!」

あちこちから挨拶やら、心配の声があがる。そうなると、白ひげも カンナも返事を返さなくてはいけなくて、 カンナが横を見たときにはもう白ひげは カンナに背を向けていた。


「父っていうより母…?」
「誰が母なんだ?」

背後から自分に向けられた言葉に カンナは素早く2歩後ろに下がって、にっこりと笑った。

「おはようございます。」
「………。」

社交辞令とはまさにこのこと。あからさまな笑顔とあからさまな棒読みにサッチも返す言葉を失った。

「覇気の使い方が上手くなったな。」
「おはようございます、ビスタさん。」
「おはよう、 カンナ。」

横から髭を撫でながらやってきたビスタに挨拶をする カンナにサッチは半泣きだ。

「ちょっと!?つい数日前まで俺といい感じだったのに、何この扱われよう!?」
「いい感じになんてなってないし、半径1m以内に近づかないでくれます?」

ビスタとは自然に話しているのに、相変わらずサッチには冷たい反応でサッチの心が折れそうになる。

「あと数日で次の島に着くそうだ。あっちで頼れる人はいるのか?」
「はい。半年に1回は行ってるので大丈夫です。」

ビスタの心配を余所に不安な事などほぼない。指名手配の件もどうにかできるだろうと楽観的だ。

「お前との旅もなかなか楽しかったぞ。」
「いえいえ、こちらこそ。」

もうお別れの挨拶までし始めてしまった2人にサッチは口をつぐんだ。
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