企画

□拍手C(サッチ)〜13.5.7
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サッチと長年付き合ってきたが、サッチが寝込んだことなんて一度もなかった。いつだって、笑いの中心にいて、常に皆を笑わせていた。
それが、珍しく朝起きてこなくて様子を見に行くと、息を荒くして寝込んでいて、額に手をあてると熱くて驚いた。

「今日はゆっくり寝てなよ?」

自慢のリーゼントも今日はお休みで、くたりとなっている髪の毛が額にかかり、その髪をどかして、氷水で冷やしたタオルをのせる。

「私、仕事片づけてくるから、大人しくしててね?お昼は誰かに届けさせるから」
「あぁ、悪りぃな……。」

元気のない返事に見送られて部屋を出て、サッチの代わりに書類を整理したり、マルコと打ち合わせをしたりしていると、時間はあっという間に過ぎていった。

陽も暮れ始めて、サッチの部屋に行くと、部屋はしんと静まり返っていて、サッチは眠っていた。いつもは明るい声色で迎えてくれる人が、その笑顔がないだけでふと寂しくなってしまう。
ベッドの横に腰を下ろして、額に手を当てると、まだ少し熱があるようで、手が暖かくなる。

「……もう夕方か?」

不意にサッチの手が重なって、サッチが目を開ける。

「起こしちゃった?」
「ん、いや…。」

額から手を離すと、それにつられてサッチの手も離れて、その手でガシガシと頭をかいた。

「夕飯食べれる?今、持ってくるわ。」
「なぁ……。」

夕飯を取りに行こうと立ち上がろうとすると、サッチの手がそれを妨げるように手を握りしめて、振り返ると、サッチははぁ、と息をもらした。

「部屋に一人でずっといるのって寂しいんだな……。もうちっと一緒にいてくれねぇか?」

病で気まで弱くなってしまったのか、珍しいことを言うサッチに心がきゅんとなる。
腰を再び下ろして、サッチの頭を撫でて、少し熱をもった頬にキスを落とす。

「心配しなくても今日はこの後ずっと一緒にいるわ。サッチが元気でいてくれなきゃ私も寂しいの。だから、早く良くなって?」

そう素直に言うと、あぁ、と、サッチは照れ笑いして握っていた手に力を込めてきたので、自然と笑みが零れた。


いつもの明るいサッチがいいけれど、たまにはこういう弱いサッチを見るのもいいかもしれないと思ってしまったのはサッチには内緒にしておくことにした。

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