風の道2
□重なる
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扉を乱暴に開けたマルコはキッチンを兼ねたリビングを素通りして奥の寝室のベッドの上にセイラを下ろした。セイラの足からヒールの高いブーツを靴下と一緒に脱がしてやる。
「…あぁ、やっぱ慣れねぇもん、履くもんじゃねぇな。」
月に照らされた足の小指あたりが赤くなっているのを見てマルコは優しく足の背を撫でた。
セイラの身体がぞくり、と波打つ。
セイラを見上げたマルコの視線がセイラを貫く。
「10秒待ってやるよい。止めたいなら今の内だ。」
マルコなりに逃げ道を与えたつもりだった。しかし、セイラがその胸に不安を抱いていても拒絶してこないことはわかっていた。
セイラがその瞳に不安を浮かべながらも、首を横に振ったことにマルコは気を良くした。
マルコの指がセイラの頬を滑るとセイラの身体が小さく震え、弱弱しく息を吐き出した。
マルコの顔がセイラに近づき、これからの行為は加速していくことを示した。
「…待って!!」
マルコの唇が自分の唇に重なる前にセイラはマルコの唇を自分の手で覆った。
突然のことにマルコは今の状況を疑った。
まさか、ここにきて拒絶…?
「言って、おくことがあるのっ。」
今にも泣きそうな子犬のような顔に唇を固く結んだセイラにマルコも身構える。
「私、処女だし、マルコが今まで相手してきたようなお姉さん達みたいに慣れて、ないし…。胸もそんなにボインじゃないしっ…。」
「ぶっ……!」
セイラの発言に思わず顔を逸らして吹きだす。
「ちょっ…真面目に聞いてよっ。」
セイラにしてみれば、初めてのことだから、マルコには色々と承知しておいてほしいことがあって、意を決して言ったのに笑われるのは心外だった。
マルコに至ってはまさかこの状況でそんなことを言われるとは思わず、それが逆に愛おしさを増させた。
「安心しろよい。がっつかねぇよう努力はするよい。」
「努力…するものなの?」
セイラはどこか楽しんでいるマルコに不満を感じるも、次の言葉を吐き出す前にマルコに口をふさがれた。
「もう、黙れよい。」
「まっ…。」
待って、の一言は飲み干されてしまって、ベッドに組み敷かれたセイラはマルコから与えられる感覚に身体をこわばらせた。
マルコの唇が鼻から顎へ、顎から首へと下がっていき、腰のあたりにあった手は少し下に降りてワンピースをたくしあげながら腰のラインに沿って徐々に上がってきて、胸に到達したときにはセイラの身体は石のように固くなってしまっていた。
「セイラ、力抜いとかねぇと疲れるだろい。」
「むりっ…。」
「……。」
マルコは恥ずかしさからマルコと顔を合わせようとしないセイラの初々しい姿に口端をあげた。
「っ…!?」
「いい形してるねい。」
マルコの冷たい手が下着ごしにセイラの胸を揉むと、セイラがより一層きつく目を閉じる。だが、確実に、その口から洩れる吐息は熱を帯び始めていた。
片方の手が セイラの胸を弄ぶ一方で、もう一つの手は セイラの手と絡める。昔よりも成長した手はそこらの女より硬い手だったが、それが海を生きる女であることを物語っている。
「セイラ。」
マルコが胸を弄ぶ手を緩めて、 セイラの名を呼んで、そこでようやく目を開けた セイラの目の前に初めて見るマルコがいた。
白ひげ海賊団1番隊隊長のマルコでも、家族としてのマルコでもなかった。心臓を鷲掴みにあったように、捉えた者を離さないその瞳には、獰猛な何かがあった。
「愛してるよい。」
「………え。」
その口から漏れた言葉は意外なもので、その言葉に憧れはあっても、サッチがしょっちゅう言ってくるそれとは比べものにならないくらいに セイラの心を高鳴らせた。
「……何回も言わねぇからな。」
マルコ自身、愛してる、なんて最後に言ったのはいつだったことか。そもそも言ったことがあったかどうかも怪しい。それでも出さずにはいられなかった。それがマルコの気持ちだから。