風の道2

□新たな物語
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穏やかな航海を一変させたのはセイラの一言だった。

秋晴れ空の下、悠々自適に船を進ませていると、前方に小さく船が見えた。
見張りはそれを商船だと言い、確認をしたジョズもそうだ、と言うし、その商船もモビーディック号と接触するような航路を取っていなかったのでお互いこのまま進もうとしていた。

しかしそれに異議を申し立てたのはセイラだった。

「あの船から助けを求める声が聞こえる。」

その言葉にマルコ達は商船にバトルシップで近寄った。
射程距離内に入ったのか突如商船から砲弾が飛んできてやむなく白ひげ海賊団も応戦した。

とは言え相手は戦闘慣れしていないこともあり、あっという間に片付けられていったのだが、戦闘中に船が傷ついたのか、船は徐々に沈み、海に飲み込まれていっていた。

「この中から気配がする……。」

セイラはマルコと共に船内に続くドアから廊下の先を見やる。

「おりゃぁ!!」

生き残っていた敵が二人の間に剣を振り下ろしてきて、マルコはドアの内側に、セイラは外へと追いやられた。

「マルコ、時間がない。ここは私に任せて。」

マルコが小さく頷いて、船内へと姿を消していくのを確認して、残っていた残党が船内へと入っていかないように攻撃と防御を繰り出して、数秒でケリをつけた。

がくん、と船が大きく揺れてより船が沈みこんできて船内に入り込んだ水の重みで船が傾き出す。

「マルコはまだか!?」

脱出を始めた隊員達だったが、セイラは船内に入ることはなく、ただ扉の前に立ち、マルコが戻ってくるのを平然と待ち続けた。

しばらくすると、マルコが薄汚れたシーツに包まれた女を抱えて戻ってきて、それを合図に全員が撤退をした。

「ギリギリだったよい。」

船内に入ったマルコはセイラが人の気配がすると言っていた階まで降りると、そこから神経を集中させて閉まるドアの先の気配を辿った。
奥から2番目のドアから弱々しくはあるが人の気配がしてドアに手をかけるも鍵がかかっていて開かない。
足元には徐々に水が迫ってきていて、マルコは迷うことなく扉をぶち抜いた。薄暗い部屋とも物置きとも言えない小さな部屋には人の姿はなくて、足を踏み入れると同時に横から何者かがマルコに覆いかぶさった。

「落ち着けよい……!」

相手は錆びだらけのフォークを持っていて、マルコをこの船の船員だと勘違いしてか襲いかかったのだ。とはいえ、その動きは緩慢で力もなかったから、すぐにマルコに抑えられてしまってやせ細った腕がマルコの手から逃げようと暴れるものだから、マルコは焦った。

「お前を助けにきたんだ。この船は沈む。早く逃げるよい!」
「っ……!!」

女の口は動いているが音が漏れることはなく、これ以上女のペースに合わせていては逃げ遅れると判断したマルコは女を無理矢理引っ張って外へと連れ出そうとした。
しかし、女が外の明かりに目を眩ませて更には体をガクガク震わせるからマルコは舌打ちをして、部屋の中にあった薄汚れたシーツを女に被せるとその軽い身体を抱き上げた。
きっと辛い思いをしたのに突然外に連れ出されたら動揺が更に悪化するのは目に見えていたし、掴まってろい、と端的に言うと、マルコは外へと急いだ。

「お疲れ、マルコ。船待たせてあるから乗って。」

マルコを確認したセイラはマルコの腕の中で丸くなる女を一瞥するとマルコ達を横付けしてある船へと誘った。
普段は不死鳥化してモビーまで戻るのだが、人を抱えたままではかえって危険だから、とセイラの気遣いだった。
女はマルコが船に乗るとほぼ同時に気を失った。
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