風の道
□序章
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世界政府への加盟を拒み、戦いに敗れた国。名を失った廃れた島に私はいた。
島は完全な無法地帯。
ある者にはパラダイス。ある者には地獄。
私は後者だった。金も権力もない子供は廃れた町と煌びやかな街の狭間で日々の生活を送っていた。
食料を盗みは、逃げ、時には捕まった仲間が二度と帰ってこなかった時もあった。
そんな生活をどれほど送っただろうか。
ある雨上がりの昼下がり。
「おいで。」
雲間からこぼれる陽を背に受けた人に手を差しのべられた。
私は眩しさに目を細めた。
顔は陽のせいで見えない。だけど、私はその手に当てられた光に惹かれて、その手を掴んだ。
「人の話聞けよいっ!」
バシンッ!
「った〜……何するのよ、マルコ!!」
突然、頭に走った痛みに思わず頭をおさえて、殴った相手を睨んだ。
だが、その睨みにも臆することなく、お前が話聞かないからだろい、なんて更に殴られた。
「乙女に暴力ふるなんて、サイテー!!」
「お前のどこが乙女だよい。」
「…このパイナップルが。」
「あぁ?」
禁句をぼそりと呟けば、マルコの眉がピクリと動いた。
と、マルコの拳に再び力が入ったのを見逃さずセイラはダッシュで逃げた。
後ろで、マルコが舌打ちして、ため息をもらした。
ふと空を見上げれば、かもめが風に身をまかせ泳いでいた。
ここには私を虐げるものは何もない。
12年前の今日、私は自由になった。