東方幽奏希
□予想なんて大抵外れる
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紫「とりあえず落ち着きましょう。 状況の整理が必要だわ」
紗希「そうですね……と言っても勢いで僕が体を移り変わってしまったというだけですが」
紫「それだけの事だとしても問題なのよ。 本当に入れ替われてしまったんだから」
幽々子「で、さっきまでの紗希ちゃんの体は何処に行っちゃったのかしら〜?」
幽々子様は何を思ったのか分かりませんが小さな女の子になった紗希さんに近付いてもふもふと抱きついています。
紗希さんも特に嫌がる事なく抵抗していませんが。
……私もしていいかなぁ……
紗希「なぁ妖夢。 妖夢は僕の体が何処に行ったか分からないか?」
妖夢「わっ、私ですか? 私もちょっと分かりませんでしたが……」
先程までとは違い女の子の声で呼ばれた為、少し驚いてしまいました。
紗希「だよねぇ…… どうしましょう、色々と手詰まりですが」
紫「今から私が探してみるわ。 無ければ諦めるのも一つの手ね」
紗希「諦めるなんて僕は御免ですよ」
それなりに緊張感を出そうとして少し低い声で言ったのかと思いますが、幽々子様に抱き締められたままでは緊張感なんて生まれるわけがありません。
むしろ小さい女の子のちょっとした背伸びみたいなもので少し和みます。
紫「はいはい、分かったから大人しく待ってなさいね?」
紗希「子供扱いしないでください!!」
紫様はその言葉を最後にスキマに入って姿を消した。
紗希「不安だ……不安しか生まれない……」
幽々子「大丈夫よ〜 紫はああ見えて信頼できる所あるんだから〜」
紗希「分かりましたけどそろそろ離れてくれません? 身動きとれないんですけど……」
幽々子「いいじゃないの〜 このまま大人しく紫を待ちましょうよ〜」
紗希「大人しく待ちますけどこの状態はやです〜!」
そう言う紗希さんの顔は気のせいでなければ赤くなっています。
いくら記憶を無くしていても一応は男性。
女性からの過度なスキンシップは何となく苦手なのでしょうか?
妖夢「と言うか幽々子様の弱い力にすら勝てない程に非力な体になってしまったんですか?」
紗希「けっこう力は入れてるつもり……なんだけど……」
確かに紗希さんの腕はぷるぷると震えている。
一応力は入れているみたいです。
幽々子「まぁまぁ、力を抜いてリラックスしましょうよ〜」
紗希「あぁ……幽々子さんの気抜けた声を聞くと力が抜ける……」
紗希さんは抵抗を止めたのか、脱力して幽々子様の腕の中にすっぽりと入ってます。
妖夢「しかし、紗希さんも目覚めた早々災難ですね」
紗希「全くだよ……って言いたい所だけど、そうは思わないかな」
妖夢「……もしかして変わった事が好きですか?」
紗希「ツッコミたい所はあるけど……そうではないよ。 ただ僕は死んだ身、一度人生は終わったのにもう一度人生を歩める。 しかもこんな世界ででしょ? 災難かもしれないけどそれ以上その災難も嬉しいからね」
幽々子「あらあら〜良いこと言うわね〜 撫で撫でしてあげるわ〜♪」
紗希「ま、まぁここまでくるとまた気になるけどね……」
紗希さんはいくら姿が変わって、記憶が無くなっていてもそんじょそこらの人よりよっぽど出来た人なのかもしれません。
それにしても……こう言うのもなんですが今の紗希さんは可愛いです……幽々子様の行動も分かります。
妖夢「……私も良いですか? 紗希さんの事撫でて」
紗希「はい!? 妖夢まで何を言っているの!?」
幽々子「良いわよ〜 思う存分可愛がってぇ〜」
紗希「あ、僕の意思なんて関係無いんですね。 そうですかそうですか……」
紗希さんは完全に脱力しきって幽々子様に身を任せています。
……だけど顔はやはり赤いままです。
けどそれがむしろ可愛いです。