東方幽奏希

□未来(さき)へ向かう者
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……深い闇の中で聞き覚えのある声が聞こえます……。

?『この子は成長し続ける、そうでしょう?』

?『勿論さ、この子には普通には無い才能がある。 なにより――』

?『俺(私)達の息子(娘)だからな(ね)』

どっちなんですか一体!?
親ならそんな間違い方しないでしょう普通!

?『娘でしょ! 何言っているの!』

?『違う! 息子だ! 何度言ったら――」

変な口喧嘩を聞いているとなんだか気が緩みます。

「(あぁ、これは俺の親なんだろうな……)」

自然とそう考えてしまいます。
だけど、きっとその筈です。

やがて親の声が聞こえなくなると、また別の声が聞こえてきます。

?『君は面白い子だなぁ。 大人しそうに見えるのに、凄い行動的で大胆だ。 俺もそんな根性が欲しいよ』

「(……そんな事、無いんじゃないですか?)」

俺の声も何処からか聞こえてきます。

この声は優しくて、暖かい声だ……

?『いいや、間違い無い。 君みたいな子が居るならこの国の未来も少しは安泰かな?』

「(そんな……過大評価のし過ぎですよ、俺一人なんかじゃ無理ですから……)」

どうして……なんで、こんな複雑な気持ちになるんでしょう。

?『過大評価されるって事は少なからずその人から信頼されている証だよ。 嫌味で言う人もいるかもしれないけど、そう考えると自然と楽になるよ。 あっ、もうこんな時間か! じゃあね、また会おうな〜!』

「(はい、また会いましょうね〜! ……約束、ですよ?)」

どうしてこんなに悲しい気持ちになるんだろう。
なんで、こんな気がおかしくなりそうになるんだろう……

俺の精神が少し不安定になるとまた別の声が聞こえ、強く響きました。
その声だけで、安心できました。

それは何気無いたった一言、俺の名前――
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