東方幽奏希
□予想なんて大抵外れる
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紗希さんを愛で始めてから数分後、スキマが近くに開きました。
紫「……戻ってくるなりだけど、あなた達は何をしているの?」
幽々子「何って……こうして紗希ちゃんを愛でているのよ〜」
妖夢「こうしていると和むんですよ〜」
紗希「完全に僕の意思は無視しているんですけどね。 それよりも、戻ってきたって事は僕の体が見つかったんですか?」
紫「いいえ。 見つからなかったわ」
紗希「そ、そんなぁ……じゃあずっとこの体のまま――」
紫「見つからなかったけど、何処にあるかは大方分かったわ」
紗希「ほっ……驚かせないで下さいよ…… そこは何処なんです?」
紫「ここよ」
紫様は紗希さんの事を指差しました。
幽々子様が紗希さんを放すと紗希さんは後ろを向きました。
私も釣られてそちらを向きます。
そこには壁しかありません。
紗希「いたっ!」
どうやらまた紫様に小突かれたみたいです。
紫「わざとなのかしら? それとも天然なのかしら? 私はあなたの事を指差したのよ」
紗希「僕にですか? 人には指を差すものじゃ無いですよ?」
紫「……
」
幽々子「紫、落ち着いた方がいいわよ〜 もしかしてド天然だから〜」
紫様は拳を握りぷるぷると震わせています。
紫様の力で今の紗希さんが殴られたらひとたまりもないはずです。
紫「ふうっ……ペースを取られちゃダメね。 あなたは今顔が赤いわけだけど……恥ずかしいわけでは無いわね?」
紗希「はい。 なんだか体が熱くて……」
妖夢「もしかして熱ですか!?」
けど熱があるほど体温は高くなかった筈ですが……
紫「熱じゃないわ。 ある意味これで正常なのかもしれないの」
紗希「待ってください。 話が見えてきません」
紫「簡潔に言うとね、あなたの体はあなた自身に取り込まれてしまったの」
紫様の言葉は予想の斜め上をいく内容でした。
紗希「はい? 取り込まれた? という事は僕の体は僕の中で存在しているという事ですか?」
紫「そうゆう事。 恐らく体が熱いのは体を移り変えた際の副作用かもしれないわ」
紗希「体をまた移り変える事は出来るんですかね」
紫「可能よ。 さっきガツンと小突いた時に少し調整しておいたわ」
紫様の打撃は実はかなり重要な役割を果たしていた様です。
紗希「だからそれを最初に言ってください……」
紗希さん当人はどうもその点が腑に落ちない様ですが、解決したので目を瞑る様です。
紗希「こうなった今でも念じれば入れ替わってしまうんですかね?」
紫「やり方は変わってない筈よ。 けど止めた方がいいわ。 また入れ替わると副作用が更に酷くなる可能性があるわ」
紗希「あっ……もう遅いかもしれません。 体がとっても熱くなってきて――」
紫「簡単に念じすぎよ」
紗希さんの体は光で一瞬見えなくなり、気がつけば元の男性の体になっています。
紗希「うぅ……何度も入れ替わりすぎて気持ち悪い……」
紫「……おかしいわね。 顔の紅潮が引いてるわ」
幽々子「また予想が外れたって事になるのかしら」
妖夢「紗希さんにはあまり普通の事が通用しないみたいですね」
当の本人である紗希さんは大きな欠伸をしています。
妖夢「眠いんですか?」
紗希「ぅん…… なんかいきなり眠くなってきて……」
眠気を醒まそうとしているのか目を擦り、頭を少し横に振りますが欠伸は止まっていません。
紗希「もぅ……限界……」
足元がふらついたかと思えばそこから体制が一気に崩れてしまい、一切の受け身無しで襖を巻き込んで後ろに倒れてしまいました。
妖夢「さっ、紗希さん!?」
あまりにも豪快な倒れ方なので心配になり近付くと、その心配を余所に紗希さんは穏やかな寝息を立てていました。
幽々子「予想が外れたという予想が外れたって事かしら」
妖夢「どういう事ですか?」
紫「副作用が起きて眠ったって事よ。 どうやら男と女の体で副作用が違うようね」
紗希さんは相当常識を外れた存在と化している様です……