東方幽奏希

□予想なんて大抵外れる
2ページ/2ページ

紗希さんを愛で始めてから数分後、スキマが近くに開きました。

紫「……戻ってくるなりだけど、あなた達は何をしているの?」

幽々子「何って……こうして紗希ちゃんを愛でているのよ〜」

妖夢「こうしていると和むんですよ〜」

紗希「完全に僕の意思は無視しているんですけどね。 それよりも、戻ってきたって事は僕の体が見つかったんですか?」

紫「いいえ。 見つからなかったわ」

紗希「そ、そんなぁ……じゃあずっとこの体のまま――」

紫「見つからなかったけど、何処にあるかは大方分かったわ」

紗希「ほっ……驚かせないで下さいよ…… そこは何処なんです?」

紫「ここよ」

紫様は紗希さんの事を指差しました。

幽々子様が紗希さんを放すと紗希さんは後ろを向きました。
私も釣られてそちらを向きます。

そこには壁しかありません。

紗希「いたっ!」

どうやらまた紫様に小突かれたみたいです。

紫「わざとなのかしら? それとも天然なのかしら? 私はあなたの事を指差したのよ」

紗希「僕にですか? 人には指を差すものじゃ無いですよ?」

紫「……

幽々子「紫、落ち着いた方がいいわよ〜 もしかしてド天然だから〜」

紫様は拳を握りぷるぷると震わせています。
紫様の力で今の紗希さんが殴られたらひとたまりもないはずです。

紫「ふうっ……ペースを取られちゃダメね。 あなたは今顔が赤いわけだけど……恥ずかしいわけでは無いわね?」

紗希「はい。 なんだか体が熱くて……」

妖夢「もしかして熱ですか!?」

けど熱があるほど体温は高くなかった筈ですが……

紫「熱じゃないわ。 ある意味これで正常なのかもしれないの」

紗希「待ってください。 話が見えてきません」

紫「簡潔に言うとね、あなたの体はあなた自身に取り込まれてしまったの」

紫様の言葉は予想の斜め上をいく内容でした。

紗希「はい? 取り込まれた? という事は僕の体は僕の中で存在しているという事ですか?」

紫「そうゆう事。 恐らく体が熱いのは体を移り変えた際の副作用かもしれないわ」

紗希「体をまた移り変える事は出来るんですかね」

紫「可能よ。 さっきガツンと小突いた時に少し調整しておいたわ」

紫様の打撃は実はかなり重要な役割を果たしていた様です。

紗希「だからそれを最初に言ってください……」

紗希さん当人はどうもその点が腑に落ちない様ですが、解決したので目を瞑る様です。

紗希「こうなった今でも念じれば入れ替わってしまうんですかね?」

紫「やり方は変わってない筈よ。 けど止めた方がいいわ。 また入れ替わると副作用が更に酷くなる可能性があるわ」

紗希「あっ……もう遅いかもしれません。 体がとっても熱くなってきて――」

紫「簡単に念じすぎよ」

紗希さんの体は光で一瞬見えなくなり、気がつけば元の男性の体になっています。

紗希「うぅ……何度も入れ替わりすぎて気持ち悪い……」

紫「……おかしいわね。 顔の紅潮が引いてるわ」

幽々子「また予想が外れたって事になるのかしら」

妖夢「紗希さんにはあまり普通の事が通用しないみたいですね」

当の本人である紗希さんは大きな欠伸をしています。

妖夢「眠いんですか?」

紗希「ぅん…… なんかいきなり眠くなってきて……」

眠気を醒まそうとしているのか目を擦り、頭を少し横に振りますが欠伸は止まっていません。

紗希「もぅ……限界……」

足元がふらついたかと思えばそこから体制が一気に崩れてしまい、一切の受け身無しで襖を巻き込んで後ろに倒れてしまいました。

妖夢「さっ、紗希さん!?」

あまりにも豪快な倒れ方なので心配になり近付くと、その心配を余所に紗希さんは穏やかな寝息を立てていました。

幽々子「予想が外れたという予想が外れたって事かしら」

妖夢「どういう事ですか?」

紫「副作用が起きて眠ったって事よ。 どうやら男と女の体で副作用が違うようね」

紗希さんは相当常識を外れた存在と化している様です……
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ