東方幽奏希

□意外な出会い、進む信頼
3ページ/5ページ

「ところであまり見慣れない服を着ている様だが……まさか外来人かい?」

紗希「外来人? 何ですかそれ?」

「外来人ってのは薄いんじゃない? 人間っぽさが薄いって言うか……妖怪じゃないけど人間でもないって感じ?」

そもそもに外来人っていう言葉を初めて聞いたのですが……

紗希「僕は記憶喪失ってやつらしいですよ。 よく分からないですけど……」

「記憶喪失? 君も災難の様だね」

紗希「にしてもやっぱりこの服って変ですか」

やっぱり服は変えた方がいいですか。
少し着苦しいですし……

紗希「あっ、さっきの出来事で忘れそうになっていました。値段についてなんですが」

「そうだね……これくらいでどうかい?」

霖之助さんは何かを取り出すとそれをパチパチと弾き、僕の前に出しました。
……いや、それがどうしたのでしょうか。

「霖之助さん、算盤の見方、分かってないわよ」

霖之助さんは霊夢さんの言葉でハッとしたかと思うと少し考え始めた。

霖之助「……とりあえずどれくらいの金額を持っているんだ? その中から勝手に金額分を引いてしまっても構わないかな」

紗希「はい、是非ともお願いします。 お金の桁も分からない様な状態ですので」
霖之助「……いくら記憶喪失とは言っても早急に知識を付けた方がいいよ」

僕は妖夢から預かった財布を台の上に置きました。
財布をゆっくりと開けた霖之助さんは驚いた顔をした。

霖之助「(これだけ無知な子にこれだけのお金を持たせる人がいるとは……) 全然足りているね。 と言うか半分も無くならないよ」

紗希「本当ですか!? となりますと……やっぱりまだ何か買う余裕があるんですか?」

霖之助「余裕はあるよ。 他にも何か買うのかい?」

僕は店の中を見渡し、興味を持った物を見つけました。

霖之助「それはマフラーという物だよ。 首に巻いて使う防寒具さ」

薄い青色のマフラーと呼ばれた物を手に持ちます。
端を持ってみると予想外に広がり僕の身長よりも長いです。

霖之助「君には少し大きすぎるんじゃないか? もう少し小さいのがあるはず……」

紗希「……いえ、これで大丈夫です。 これの分のお金も引いておいて下さい」

僕は霖之助さんから買った物と財布を一緒に受け取りました。

霖之助「今ここで付けていってはどうだい? マフラーも、そのリボンも。 邪魔そうな後ろ髪を纏めるのに最適じゃないかな」

紗希「後ろ髪、ですか」

僕は自分の腕の脇と同じ位の所まで伸びた後ろ髪を触れた。
確かに人里の男性を見た限りではここまで長い人はいませんでした。

男の人として変なのでしょうか?

紗希「纏めると言ってもどうやるんですか?」

霖之助「そこまで分からないのかい。 ……仕方無い、ほら、後ろを向いて」

僕は言われた通りに後ろを向くと後ろ髪を優しく掴まれました。

霖之助「この長さだと……首裏辺りで結ぶのが丁度いいかな」

霊夢「やり方が分からないって言うんならいっそ外れない様に堅結びにしたら?」

霖之助「馬鹿を言うな、髪の毛が傷んでしまうだろう。 ……これでよしっと。 出来たよ。 鏡で見てみたらどうだい?」

霖之助さんから渡された物を見てみると僕の顔が反射して映っていました。
あっ、映季さんも同じ物を持っていました。

霊夢「意外と似合ってるじゃない。 と言うかこっちの方が違和感無いわ」

霖之助「そうだね。 とてもよく似合っているよ」

紗希「あ、ありがとうございます」

……おしゃれって言うのは悪くはないですね。
僕がそう思いふと外を見てみると少し暗くなってきていました。

紗希「僕はそろそろ行かないといけないので失礼させてもらいますね。 今日はありがとうございました」

僕は買ったばかりのマフラーを首に巻き、壊れた扉の前で一礼してから香霖堂を後にしました。











霖之助「……久々にちゃんとした客を見た。 無知な事を除けば」

霊夢「私だってちゃんと客をやってるじゃない」

霖之助「君らを客と思った事は残念ながら一度もない」

霊夢「にしてもさっきのとはまた会う気がするのよね」

僕の言葉は無視か。

霊夢「それも普通じゃない会い方」

余談だが霊夢の勘はよく当たる。
さっきの子、間違って巻き込まれて退治されなきゃいいが……
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ