ユリリタ
□共通の思い出
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星喰みを全て転生させ、この世から魔核【コア】が無くなった今、
それでもあたしは首に魔導器【ブラスティア】をつけてる。
中心にあった、赤い魔核【コア】はもう無い。だから、本当にただの飾りだけど。
いつもあった物が、突然無くなる気持ちには耐えられそうもないから。
そういう意見の人間は多いらしくて、今目の前にいるユーリも、手首の魔導器【ブラスティア】を付けたままでいる。
同じく、赤い魔核【コア】は無い。
「ん?どうかしたか?」
「その魔導器【ブラスティア】、なんではずさないの?」
じっと見つめるあたしの視線に気づいたユーリの問いに、あたしは率直に聞いた。
あたしと同じ気持ちなのだろうが、聞いてみないことにはわからない。
「ん…ああ……形見、だからな…」
「…え?」
言いにくそうな表情でユーリが発した言葉に、あたしは目を丸くして言葉を失った。
今、形見って言った。
確か、この魔導器【ブラスティア】はシゾンタニアで会った騎士の物。
それはユーリに確かめてないけど、覚えてる。
それが、形見…ということは…。
「…ふぅん…そう……あの人、死んでたんだ…」
ユーリに聞こえないくらい小さな声で呟いた。
人の良さそうなおっさん、くらいには覚えてる。
エアルと魔導器【ブラスティア】について真剣に話を聞こうとした騎士は珍しかったし、魔核【コア】も貰ったから。
コイツは、ユーリは、もう随分昔に大切な物を一瞬で失ってたってこと。
コイツの信念みたいな一本通ってるところは、そういう経験から来るものなのかも。
どっちを取るか。もう選んだってわけね。
ずっと前から思ってた。ユーリは、あたしと似てる。
そこだったわけね。
――…片手でしか物を持てないことを知ってる。
片手は空けておかないと、大切な物を守る自分を持っていられない。
あたしたちは、今回、エステルと世界を守るために、魔導器【ブラスティア】を手放した。
そんなとこまで、そっくりね。
「……馬鹿っぽい」
「…かもな」
あたしの悪態にもユーリは笑う。
こいつは、絶対否定しない。
そういうところは、あたしとは正反対で、だから、少しだけ居心地がいい。
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2010.7月某日
mixiで落書きしたもの。
晴さんはこうしてたまにユリリタを書いていました。
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