sonic


□トキよとまれ
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普段、当たり前に存在して自分を取り巻いているもの。
そのありがたみは、なくなったときに初めて気づかされるんだ。

なくなったものが大切だったのか、大切だったものがなくなったのか…。そんなことは覚えちゃいない。

それでも、なくなったものとの歴史は自分の中にしっかり根付いて、無くなった世界は違和感以外の何物でもなかった。

だからこそ、今ならボクを生み出したカレの気持ちが解る。

カレは、故人を惜しむことが出来なかったんだ。

そのカレの未練の塊として生まれたのが、永遠のエネルギーを求められた双子の彼女の方ではなく、僕だったのだろう。
今思えば、あの実験が失敗したのは、ほんの少しの我儘な気持ちが含まれたからなんだと思う。

だからこそ、ボクもまた我儘なんだ。
いや、それがカレの…人のせいにするつもりはないけれど、それでもボクは人一倍我儘なのには変わらない。

望んだんだ。君に側にいて欲しいと。
選んだんだ。誰よりもなによりも君だけを護りたいと。

それ以外はなんにもいらない。

そのつもりだったんだけどなぁ。
そのはずだったのになぁ…。



笑顔が見られない。声が聞こえない。温もりがない。
もう、側にいてもらえない。
護れ………、なかった。







「メフィレス。」


もう、呼んで、もらえない。


 

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