ストロベリーウォーズ
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今日は、某ドラマの打ち上げで、恵は上機嫌のまま帰宅した。
「おい…」
「ただいまー!蘭丸ー!帰ったよー!」
「……てっめぇ…、まずプロローグからおかしいだろ、帰宅しただとか、ここはおれんちだろーが!!」
「はい!これお土産ね!」
「聞いてねえな…」
蘭丸は軽くため息を吐きながら、ソファーに雪崩れ込む恵を受け止めて一緒に沈んだ。
「おい…大丈夫かよ……って、なんだこりゃ…」
自分の胸に押し付けたままの恵の顔を肩口まで押し上げて息をしやすいようにしてやり、右手に持つ謎のビニール袋に視線を移した。
「土産ってこれか…?」
片手で取り上げようとしたが、頑なに離さないため、指で中身を確認すると大福にいちごが挟まった…文字通り、いちご大福がごっそり入っていた。
うまそうだ。
しかし、この体勢で食べるのはつらい…。
「つーか勝手に食べたらこいつが怒るよな…」
横目で恵を見るとすやすやと寝息を立てている…。
はぁ…。
再びため息を吐いた。
天井を仰ぎ、さてどうしたものかと考えていると、デニムのポケットに入れっぱなしにしたままの携帯が鳴った。
画面を見るなり蘭丸の表情が曇る。
恵の友人である、ゆきからの着信だ。
わざわざ蘭丸の携帯にかけてくるあたり何となく嫌な予感がした。
───ピッ、
「……おー…」
『蘭丸???そっちにさー恵行ってる?行ってるよね??今すぐこっちに連れてきてー!』
「…っ…るせぇ…。ふつうに喋れよ…耳が痛え…」
ゆきも酒が入っているようで、声のボリュームが定まっておらず、完全に声が漏れている。
『いるの?いないの?』
「居るけどよ…爆睡してっから連れてけねぇよ…」
『えー…わたしのいちご大福があああああ!!』
いちご大福…
ああ、これか。
「つかこいつすげー力で大福入った袋握ってるから大福だけ持ってこいとか言っても無理だからな」
『うぐ…』
「おい、ゆき」
『なに…』
「明日でいいだろ…。朝持って行ってやるからよ…」
数時間で腐るものではないだろう。
とりあえず、電話を切りたい。
どうやら恵はゆきにいちご大福を渡す約束か何かをしていたらしく、酔っぱらったせいで蘭丸のアパートに来てしまったようだ。
女の友情に勝った気がした蘭丸は、少しだけ顔を緩ませてた。
恵を横抱きにして毛布に手を伸ばす。
相変わらずビニール袋を離さない彼女を見て更に顔が緩んだ。
「どんだけ大福が大事なんだよ…」
そう言って苦笑した。
13/04/26/up....続く