うたプリ短編
□あなたの手のひらで
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「あ!映った!今映ったぁ!藍ちゃんだぁ!きゃー!」
今…私、大変興奮しております。
夜の人気音楽番組に私が曲提供した美風藍が出演しているのです。
司会者が藍ちゃんを紹介した瞬間もうたまらなくて先程の叫び声を上げてしまったのだ。
作曲家の私はそれ以前に美風藍の大ファンで、曲提供のオファーがきたときは泣いて喜んだ。
「はぁ…今日もお美しいです…」
「…………▲▲」
ヒヤリとした冷たさを織り混ぜた声…
振り向くと、テレビにまさに映っている最中の藍ちゃんが仁王立ちして、ラグにぺしゃんこ座りしている私を見下ろしていた。
「藍ちゃんが二人!!!」
「本気で言ってるの?」
………………。
「ごめんなさい。録画です」
「ホント…キミってさ、ボクをファン目線で見る癖直らないよね…」
「だ、だって…」
だって、ずっとファンだったんだもん…本当に憧れだった。
美風藍に曲提供をするのを目標に頑張ってきた。
ただ、それだけのために。
だから嬉しくてたまらないんだ。
私が作った曲を藍ちゃんが歌って……
「ハァ…すぐ泣く…。それも直らないよね…。ボク、作曲家に会って早々泣かれたのキミが初めてだし…。あれはさすがに衝撃だったよ」
「……っく…藍ちゃんは私がどれだけ藍ちゃんを好きか分からないからそんなこと言えるんだよ!!」
「分かるわけないよね」
「酷い(泣)」
でもこんな冷たい言葉しかくれない藍ちゃんだけど、藍ちゃんの手は私の頭の上にあり、優しく撫でてくれているのだ。
とても暖かい。
「こういうとき、キミはどうすれば泣き止むわけ?」
「……だ、抱き締めればいいと思うよ」
ひっ、言ってしまった…
「…って漫画に書いてあっ、」
言い終わる前に目の前が暗くなった。
恐る恐る視線を上げると、藍ちゃんの顎が見えた。
これは…本当に抱き締められている…!!
し、死んでもいいかも。
「ちょっと、▲▲…息してる?やめてよね、ボクの腕で死ぬとか…」
「あ、いや…その…」
「でもホントだ…泣き止んだね」
そりゃびっくりして涙も引っ込むに決まっている。
「で、その漫画はこのあと、どうしたわけ?」
「ん……えっと…えっと…」
「聞こえないんだけど」
「キ……キスしてた…」
「ふーん…、そう」
「うん…。……ッン……???」
ん―――――――――っ!!!!!
藍ちゃん!?
美風さん!?
美風様!?
「何?え、なんで?なんで?藍ちゃんのバカぁ!!!」
………信じられない。
超簡単に藍ちゃんにちゅーされた。
「バカなキミにバカ呼ばわりされる覚えは無いんだけど」
「バカバカバカバカバカ!」
「………なんでまた泣くの…」
「ちゅーは特別なんだよ!!こんな簡単にしちゃダメなんだよ!!!」
なんだか妙に…切なくなった。
藍ちゃんは好きで好きでたまらないけど…こんな簡単にちゅーをしてしまうなんて…
「なんで本当にキスしちゃうの(泣)だ、抱き締めるのは…ま、まぁ百歩譲っていいとして…漫画じゃないじゃん…!!ちゅーは好きな人にするもんな…っン…ん…!!」
「ちょっと黙ってよ」
「……ん……っン、」
長い長いとろけるようなキス。
腰が砕けるかと思った。
歯列を割って私の舌を探す藍ちゃんの舌が…気持ちよくて頬が紅潮した。
「…っ…ハァ…、ったく…無駄な労力使わせないでよ…」
「…あ…ああ、藍ちゃん…」
「で、二回目のキスの意味は分かった?」
「え?」
「え?じゃないよね。だから、キミが言ったんでしょ、キスは好きな人とするもんだって」
「………言ってる途中でしたくせに…」
「なに?」
な、なんでもありません…
と言う代わりに藍ちゃんの胸に顔を埋めた。
なんだかズルい。
弄ばれてる感が否めない…。
なのに好き…。
こうなったら藍ちゃんに少女漫画読ませてみようかな。
end....
12.12.04.
(他の人にはしない…よね?)
(くどいね…)
(だ、だってぇ…)