優しさのluce

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アイドルデビューして早1年…事務所からデュエットソングを出さないかという話を頂いた。
まだまだ駆け出し、断る理由など無い。

「ありがとうございます。私なんかでいいんですかね…」
「今をときめくアイドルが何言ってやがる」
「アイドルって言っても私はもうハタ、んぐっっ」
「ちょ、バカ野郎!お前…事務所とはいえ機密を軽々しく口にすんじゃねえ!!」
「…………むぐ…」

日向先生が私の口を思い切り塞いでいるので返事が出来ないが、身振り手振りで反省してます的な思いを伝えた。

「…っはぁ……う、うっかり…すみません…」
「ったく…」

こんなことをされるのは私が重大な秘密を抱えているからで…バレたらアイドル生命も危ぶまれる可能性もある。





その重大な秘密とは…



年齢詐称

…である。

アイドル●●▲▲は16歳でデビューし今年17歳。
しかし実際は…お酒も煙草もOKな20歳。
学園長が「▲▲サンの才能はスンバラシイものデース!!BUT!顔と年齢が合ってましぇーん。今日から▲▲サンは16歳なのデース!」と言い、私のアイドルとしての年齢が決定した。
当時19歳…確かに童顔だが…16歳設定には驚いた。
そしてなんだか胸が痛い…気がする。

この秘密を知る人間は学園長と元担任である日向先生、林檎ちゃん…そして早乙女学園に通ってた時代の同期生の数人…その他諸々。
学園長の力で完全に口止めされているようで………もはや笑うしかない。

そんなこんなで…私は実際の年齢よりも▲3の干支やらなんやら…を頭に叩き込んだり…たった3年とはいえ流行もギャップがあり…違う自分を作るのが本当に大変だった。

ゆえにキャラクターまでも作り込んでしまい…完全に収集がつかない状態に。
いつかはバレる日が来そうで怖い…。



「ところで誰とデュエットするんですか?」
「ん?あ、あー…美風藍だ。お前も知ってるだろ?」
「あー、来栖と四ノ宮のブラザー…ですよね」
「で、作曲は七海だ」
「え!七海さんかー、へぇー。あの子の曲好きだから嬉しい」


なんてのんきにしてはいるけれど…美風藍については来栖と四ノ宮のブラザーであるとかしか情報がない。
だって超人気アイドルといっても歌しか知らないし。
彼らのブラザーとして活動しているのを見て、ああ本当に存在してたんだーと思ったくらいだ。


「しっかしお前…本当にアイドルかって思うくらいオフんときは酷いな」
「アイドルですが何か」

日向先生が私を下から上まで視線を滑らせ…深くため息を吐く。

「お前、まさかオフだといつもその格好なのか?」
「はい、そうです」


その格好とは黒ジャージのことだろう。
いいじゃないかオフくらい楽な格好で。
いつも露出の高いフリフリなレインボーカラーの衣装ばかりで疲れるんだ。

ついでに言うと髪の毛もボサボサ、ノーメイクの眼鏡。

「その姿なら外歩いても誰も分からねぇな(笑)」
「そりゃ好都合ですよ」





さて、これからどうなることやら…。
頭をぽりぽりかきながら私は事務所を後にした。

 

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