優しさのluce

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その後、医務室にて美風さんが私の怪我の手当てをしてくれた。

淡々と…そして華麗に処置してくださいましたよ…。
痛いって言うと『当たり前でしょ』とあのかわゆいお口から憎まれ口が発される。
不思議で仕方無い。
しかし彼は本当に16歳なんだろうか。
あまりにも大人びている。







ところかわってレッスン室。
ピアノが1台だけ置いてあるシンプルな部屋だ。
丁度空いていたので、私たちはここに移動した。


「美風さん、歌って歌って」
「キミが弾くの?」
「うん」

とりあえず、来栖や四ノ宮と出していたCDのカップリングの美風さんのソロ曲を弾いてみた。
美風さんは少し驚いた表情を見せたが、スッ…と目を瞑り、私の伴奏に合わせて音を紡ぎだした。

なにこれ…なにこの歌声…

ブルッと鳥肌が立ち、指先まで震えが届いた。



……………………。



震えた手のまま…伴奏を終える。
瞬きをしたら涙が頬を伝って流れた。
なんだろう…かなしいわけでもなくて、自然と流れた涙。

今まで歌で涙を流したことなんてなかったのに…初めての体験だった。

心が震えた。


「…すごいね」
「なにが?」
「歌って…やっぱすごい…」
「ボクの?」

コクンと頷くと、美風さんはふーん…と興味無さげに返事をした。
こんな感動を受けているのはもちろん私だけじゃないはずだから、美風さんもこんな反応は慣れっこなんだろうな。


「この曲のピアノアレンジ初めて聴いたけと…なかなかいいかもね」
「え?」
「それにしてもよくボクの曲を知ってたね…」
「あ、ああ…それは来栖と四ノ宮がデビュー決まったときにCD持ってきてくれて…」
「ショウとナツキと知り合いなの?」
「知り合いというか、同級生です」
「へえ…」

顎に手をかけて何かを考えている様子の美風さん…

「他にも弾けるの?」
「弾けますよー」
「弾いてみて。ボクが合わせるから」

正直、私が知っている美風さんの曲は来栖と四ノ宮が持ってきたCDのものだけなので…とりあえずバラードちっくな四ノ宮と美風さんのデュエットソングを弾いてみる…。
歌い出しは四ノ宮からなのでそこは私が歌おう。

私が弾きながら歌い始めたことに美風さんは目を見開いていたけど、気にせずに私に続いてくれた。

重なる声が心地良い…。




まさに夢のようなひとときだった。


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