優しさのluce
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急に藍から電話がかかってきて、俺は軽く身震いがした。
藍の元からすでに巣立ったはずなのに、携帯の“美風藍”という文字にビビってしまう俺…トラウマとは恐ろしいことだ。
この前会ったときは普通だったし、一体何だというんだ…。
嫌な予感がするが、早く出ないとそのほうが逆にまずい。
ピッ
「もしもし…」
『ショウ…どれだけ待たせるわけ?にじゅうさ…』
「だ―――――っ!すみませんすみませんすみません!!」
『…まぁいいけど…。』
23秒と言おうとしたんだよな…多分。
とにかく謝り倒してやり過ごさなければ。
『そんなことより、ショウ…』
「え、なに」
『ボクが●●▲▲とデュエットするって言ったとき、ショウはボクに何て言った?』
「(な…なんだぁ??)…た、確か…女の子とデュエットなんて珍しいなー…だっけ?」
『ショウは●●▲▲と同級生なんだって?』
「お、おお…」
『ボクらがCD出したときは彼女に持っていったんだって?』
「……そ…そうだけど…」
『…………そう』
え――――――…………。
見えない…見えないぜ…俺には藍の質問の意図が見えない…!
はっ…!まさか!
「な、なぁ、藍……もしかしてさ、俺が●●と友達だって言わなかったことが…問題…だったとか…?」
俺は敢えて“問題”と言った。
本当は気に食わなかったとか?とか言いそうになったけど、さすがに抑えた。
『問題…?…………そうか…』
「…?」
『で、なんで黙ってたわけ?』
そこかー…
「別に意図して黙ってたわけじゃねーって」
『でもわざわざ“女の子”って言い方したよね、ショウ』
細けぇ…
「し、したけど…他意はない!!」
『じゃあ…なん「藍!」
藍の様子がおかしい…
このまま続ければオーバーヒートしてしまうんじゃ…。
「落ち着けって…藍、どうしたんだ??」
『………ボクの歌声を聴いて彼女は涙を流したんだ』
「あ、アイツが?マジかよ!?」
『ボクに媚を売る女はたくさんいたけどね…あんなアイドルは初めてだったよ…』
確かに●●は元々媚びを売るタイプでは無いから、それは分かる。
つーか涙を流したことに俺は驚いた。
アイツが泣いてるところなんて見たことがない。
心から藍の歌声にやられたんだろうな。
「やっぱすげーな、藍」
『は?どういう意味?』
「いやだからさ、やっぱ藍はすげーな、ってことだよ」
『ハァ…支離滅裂だね…』
「とりあえずよー、●●の事が知りたいってことだろ?」
『…………………』
「おーい」
こりゃー図星だな。
藍は興味のあることや、情報収集は博士がアップデートするからな…自分から聞いてくることは珍しい。
しかもあんな回りくどく……あいつも年相応な部分あるじゃん。
「なあ、今度さ、●●がオフんときに寮に行ってみたらいいぜ!」
『近いうちに仕事で会うから必要無いんだけど』
「いいからいいから。行けば分かるからよ」
『なにそれ』
奥歯に物が挟まったような言い方をすれば素直じゃない藍も気になって行くだろうしな。
「とにかくオフに、だぜ?」
『分かったよ』