優しさのluce

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仕事帰りにCDショップに寄って美風さんのCDを買ってきた。
とはいっても美風さんはCD自体は何枚も出しているわけではない。
今までは配信だけだったみたいだし。

なんだかすっかりミーハー気分。
どきどきしながらiPodに落として再び私は出掛けた。
向かうは寮にあるレッスン室。



生であんな歌声を聴いてしまったんだ…こりゃ自主練しまくらないといかんです…。

本当に…私と彼がCDを出すのか…いまだに現実味が無いし。



鍵盤に手を置き深呼吸をした。





















『いいじゃんか少しくらい!アイアイのケチんぼ!』
『は?起こさないと迷惑の何物でも無いよ』
『え〜…もうちょっと見てようよー!』




…………あれ、

なんか聴こえる…


『▲▲、起きなよ。キミいつからここで寝てるの??』

「へ…?」

そうか…なんか途中で歌い疲れて突っ伏して休んでたらうっかり寝てしまったんだった…。

まだ覚醒しきってない頭をなんとか起こしてゆっくりと目を開けると目の前に…………唐揚げが。

「はい、あーん」
「んぐっ…」
「ちょっと!レイジ!!」


反射的に口を開けてしまい、唐揚げが投入された。

口に広がる唐揚げの味…



か、かかかか唐揚げ!?



一気に目が覚めた。


「(もぐもぐ…ごっくん)ちょっと寿さん!!何するんですかぁぁ!!」
「寿弁当の唐揚げだよーん」
「そんなこと分かってます!」
「まだまだあるよん!」

私がわなわなと震えていると、寿さんの横で小さなため息が聞こえた。
美風さんだ。
寿さんの手からお弁当を奪い、いい加減にしなよと静かに諌めた。

「私は夜8時以降は水以外は口にしないようにしてるんです!」
「レイジ…仮にもキミだってアイドルでしょ…」
「めんごめんご!あんまりかわいい顔して寝てるもんだからうっかり★」

うっかり…

「唐揚げ…何カロリーすると思ってんですか…」
「あっはっはー、トッキーみたいなこと言うんだね〜」
「トッキー…?…ああ、トキヤのことですか…。いや、一緒にしないでください。大変不愉快です。いいですか?私は8時以降食べないだけです。唐揚げを食べないわけではありません…!!」
「あれ、▲▲ちゃんトッキーと仲悪いの?」


………………。



!!!

やべ…つい…

「あ、いや…違うんです違うんです。と、とにかく、こういうことはもうやめてください!」

私がそう言うと口を尖らせブーッと頬を膨らませて拗ねる寿さん。
いい歳して何のマネよ…まったく…。
あ、それは私もか。
いい歳して年齢詐称だしね。


「てゆーか▲▲ちゃん、こんなところで何してたのさー?あ、さてはアイアイとのデュエットに向けて練習だな〜!」
「…そ、そんなところです」
「へぇ…。楽譜もないからボクはてっきりキミはここに寝にきたのかと思ったよ」
「…………」

相変わらずかわいくない。
もうずっと歌っててほしいよ…歌声はあんなに天使なのに…。

「別に楽譜なんていりませんよ…」

私は首にかけていたヘッドホンを指でさした。

「これで聴いて、ピアノアレンジして歌の練習ってなわけですよ」

そう説明すると美風さんは私からヘッドホンを外して、耳に当てた。
コードが続いている先のiPodを見たので、とりあえず再生してみる。
何…何のチェックよこれ…

「アイアイだけズッルーイ!ボクちんにも聴かせて聴かせて」


今度は寿さんがヘッドホンを奪って聞き出したので、音量MAXにしてみた。
びっくりして寿さんはヘッドホンを外して涙目で訴えた。

「ひっど――――――――いっ(泣)▲▲ちゃんひっどい!!!」
「唐揚げの仕返しです」


はぁ。
つかこの二人は何しにここに来たんだろう。

「ボクらがここに来た理由は、キミのいびきが外に漏れていたからどこの誰だと思って来てみただけだよ」
「え!!!マジですか…うそ、ごめんなさい…」
「…ウソだよ」
「………………」


この人なんなの…私の心の呟きに答えるわ嘘は吐くわ…
美風藍ファンの皆さん…ごめんなさい。




この暴君……怖いです!!!
いろんな意味で。


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