優しさのluce

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寮の扉を開けると美風さんがいた。
いや、呼び鈴が鳴ったから出たわけですが…
なぜに美風さんがうちに…。
しかもものすごく険しい顔をしてらっしゃる。


「キミ…誰」

え。
まさか…

「わたくし…●●▲▲ですけれども…」
「………………」

こ、これは…やばいぞ。
ドン引きしている…!




休日のオフってる私に…!!!




「……とりあえずあがりませんか?立ち話もなんですし」
「確かに…声は▲▲だね…」


ははははははは…


美風さんをリビングに通し、ソファーに座ってもらったけど…ジーっと私を見ている。
疑われている…

「あ、あの…すみません…もしかしなくても…引いちゃってますか?」
「……いや、興味深いね、キミ。ショウの言う通り面白い」
「ちょ、来栖…何言ったんですか…」

あの野郎…何言った…

「キミがオフの日に寮に行ってみろって言われてね。そういうことか」
「来栖殺す」

「アイドルって自覚はあるの?」
「ありますよ。でも今はオフです。アイドルにも切り替えが大事ですからね。来栖はオンオフ関係無くああですけど」
「なるほど…一理あるね」
「もちろんオフでも街中に行く場合は抜かりなくアイドル意識しますけどね」
「へぇ…」


髪の毛ぼさってたって化粧してなくたって上下黒ジャージだって練習は欠かさないもの。
どんな格好であっても私は私。

ましてや年齢詐称している身だ…毎日毎日着飾ってるなんてごめんだ。


「ストイックといえばストイック…なのかなキミは」
「聞こえは良いですね、そのほうが。ただの干物女と言う輩もいますけどね」
「ボクも似たようなものかな」
「え、美風さんもおうちではこうなんですか?」
「いや、アイドルを演じてる部分がね」
「あの天使の笑顔は偽物…??」
「まあそうなるね。無駄に笑っても顔が疲れるだけでしょ」
「………………」

美風さん…それはあなたが若いからいえるのですよ…まったく。
…………二十歳になり、なんとなくほうれい線が気になりだし…お風呂に入りながらいつも鏡見て無駄な笑顔作って顔の体操をしてシワができないようにしているんですよー…というのは言わないでおこう。


「美風さん、お茶入れますね」
「あ、……うん。もらおうかな」
















「あ…」

お茶の用意をして戻るとソファーには美風さんは居なくて…私のピアノの前に立っていた。

ピアノの上に無造作に置かれたCDを見ていたが美風さんは戻ってきた私に気付き振り返る。

「全部ボクのCDやボクが参加してるCDだね。これもショウが?」
「いえ、違います。あの、この前レッスン室で寝てた日に買い込んだんですよ」
「ああ…。ずいぶん熱心だね。ショウにもその熱を分けてあげたいくらいだ」
「んー…熱心というか、美風さんはすでに確立されてるけど、私はまだ歌声が安定してないから、どう歌えば美風さんの声に合うかとか、そういうのを考えるわけですよ」
「本当にストイックなんだね…キミ」


言ってほんの少しだけ微笑んでくれた。

ストイック…か。
ものは言いようだな。
悪い気はしないし。



「ねぇ、」
「あ、はい」
「レッスンしてあげようか」



美風さんは鍵盤の前に座り、そう言った……



ん?












レッスン?


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