優しさのluce
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「…犯人は特定できたの?」
「いや、直接渡してきた物だ…あいつも記憶が曖昧らしいしな…特定は難しい…」
シャイニング早乙女もいつもの口調を封印し、真剣に考えている様子だ。
それもそうだ…売り出し中のアイドルがファンからの嫌がらせで怪我をしたのだから…。
封書の爆発をする仕組み自体は子供騙しなものだったが…、威力が増すようにガラスやカッターの破片も入っていた。
彼女は咄嗟に顔を庇ったせいで右手と右腕に深く傷を負い…現在は鎮静剤の作用もあり眠っている。
それにしてもかなり悪質だ。
不幸中の幸いは彼女が寮に戻ってから開封したことだ。
爆発音と悲鳴を聞き付けたマサトがすぐに救急車と事務所に連絡を入れて対処をし、大事には至らなかった。
何もかもボクのせいだ。
眠っている彼女の顔を見つめながらボクは唇を噛み締めた。
「Mr.ミカゼ…あとは頼みマシター。ミーは後処理をしに行ってきマース!…トーウ!!」
窓から飛び立ったシャイニング早乙女を「了解」と見送り、再びボクは彼女の眠るベッドの横に座った。
掛け布団から出された包帯でぐるぐるに巻かれた腕がとても痛々しく…見ていられない…。
防ぎきれなかった部分は微かに切り傷が出来ている…
頬にも…
「ん……」
彼女の頬に手を伸ばした瞬間、気が付いたのか、眉頭がピクリと動いた。
ゆっくりと瞼が開いて行き、少しだけ瞬きを繰り返し、状況判断をしているようだった。
「…あれ…美風さん…どうして」
「具合は?」
「なんだかだるいです」
「鎮静剤打ったからね…少ししたら良くなるよ…」
「そうですか…」
「美風さん…」
「なに?」
「…ごめんなさい」
「は?なんでキミが謝るの!?」
意味がわからなかった…。
「だって、美風さん…自分のせいでとか考えているでしょ…」
「…な、」
「フフ…顔に書いてありますよ」
「非科学的なこと言うね…」
「でも間違ってはいないでしょう…」
そう言ってまた彼女は柔らかく笑った。
なんで笑えるのか…
ボクは…………
「美風さん…泣かないで」
「………?!」
ボクは…泣いてなんかいない。
涙は人間の生理現象…
だからボクは…
「変なこと言っちゃいましたね…。なんか…美風さんの心が…泣いているように感じたから」
……………………。
「きゃっ……み、美風さん!?」
衝動的に彼女を抱き締めてしまった。
ボクらしくもない。
「ごめん…痛い…?」
「い、いえ…」
「好きなんだ…」
「へ…え!、ええ!?」
「キミのこの手から生まれるピアノの音色が…何でか分からないけど心地がよかった…」
「………美風さん…」
「……だから…くやしいんだ………」
「………………………ありがとう…」
「お礼なんて言われる覚えはないよ…」
そしてまた彼女は微笑む。
「美風さん…、美風さんのファンだもの…絶対に分かってくれるよ……大丈夫」
この小さな体から発せられた言葉はとても強く…ボクの耳元をくすぐった。