優しさのluce
□14
1ページ/1ページ
鎮静剤のせいでだるかったけど、薬が切れたら切れたで腕がじんじんして少しだけ痛んだ。
このくらい我慢は出来たけど、美風さんがいち早く気づいて用意されていた痛み止めの薬を飲むように施してくれた。
もう夜も遅いのに…面会時間だってとっくに過ぎている。
大丈夫なのか聞いたら美風さんは気にしなくていいよと言って少しだけ微笑んだ。
「美風さん…」
「なに?」
「眠くないんですか…?」
「そうだね、キミが眠ったらボクも休むよ」
「あ…ご、ごめんなさい」
なんて大人なんだ…本当に15歳?。
しかし薬で眠っていたせいか痛みのせいか分からないけれど眠気が一向にやってこない…。
でも私が寝ないと美風さんが休めない…
とりあえず目を瞑ろう。
「はあ…」
数十分が過ぎた頃、突然上からため息が降ってきた。
目をうっすら開けてみると、美風さんが腕組みをしながら私を見て何とも言えない表情をしているではないか……。
「いつまで狸寝入りしてるつもり?ボクに気を使ってい…」
「ち、違うんです」
美風さんが言い終わる前にとりあえず否定してみた。
だって本当にそうじゃないから。
というか狸寝入りだとかよくわかったもんだなぁ…。
「寝ようとは思ってるんですけど…寝れなくて…。あの、本当に美風さん休んでください。私はともかく美風さんの体や仕事に支障が出たら嫌なので…」
「ボクは寝なくても支障は出ないから。キミとは作りが違うからね」
「う…」
15歳、まだまだ成長期のはずだよね…いやもう立派に育っちゃってますけど美風さんの場合は。
ジー…っと見つめていたら、目があって、「あ、」と何かを思い出したかのように美風さんが私を見返した。
「ところでキミさ…」
「は、はい」
「何で歳を誤魔化してるの?メリットは?シャイニング早乙女の命令?」
ん??
突然トップシークレットをぐっさりざっくり刺されて滝のような汗が流れた。
「あ…あ、あ゛─────…え、えっと…」
「ずいぶんと動揺しているね」
「……………………」
あれれー…私のピアノが好きと言って抱き締めてくれた甘い甘い美風藍さんはどこへ言ったんだ…?
幻?
「なんでそれを…」
病院だけれど、学園長がいつもどうにかしていたから年齢は完璧に隠せていたし、今回もぜったいにそう。
その為に私の保険証はシャイニング早乙女が厳重に保管している。
なのに、なんで…
「シャイニング早乙女がうっかりとか言ってキミの保険証をボクの前で落としたんだよ。まあ、反射的に見るよね」
学園長おおおおwwwww
「それってまさか…わざと…」
「だろうね。で、さっきのボクの質問にそろそろ答えてくれる?」
「う…。えっと…命令っちゃ命令ですね…。なんか私の顔と実年齢が合っていないからとかで…」
「へえ…」
「メリットは…特にありません…」
むしろデメリットばかりだと思う。
「メリットが無いのに承諾するとかキミの判断能力って一体どうなっているの?」
「判断能力って…。それで売れるならって、そのときは思ったわけですよ…というかシャイニング早乙女ですよ??有無なんて選択肢があるわけないじゃないですか!」
「まあ、確かに。そうだね」
いろいろ大変だし、デメリットばかりだったけど…
「でも、美風さんと唄えるチャンスを頂けたわけだから…デメリットばかりじゃないですよ」
そう言って私は美風さんに微笑むと、形の良い眉がピクッと動いた。
「デメリットだよ。現にこうしてボクのせいで怪我をしたわけなんだから」
「美風さん…」
ああ…なんで…。
そんなに辛そうな顔をしないで。
13/4/24....