Un sogno leggero

□今は
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一言で表すのなら、黒だった

目を開けば、俺は一人馬鹿みたいにそこにぽつんと突っ立っていた。



それはそうとも捉えることができた

(何処だここ)

ガシガシと頭を掻く

止まっててもしょうがない。

俺は暗闇の中をこつこつ歩くことにした

闇の中にもかかわらず、俺の手ははっきり見ることができ、自分自身が鈍く光っているように思えた

(変なの)

ここは何なのか

考えるのもめんどくさくなった





何分くらい歩いたんだろう

目の前に、桃色の光が見えてきた

黒ばかりの世界、気が狂ってしまうかと思っていたその場所に、光が入る

気が付けば俺は走り出していた

手を伸ばして、桃色の光にすがるように

…その光は桜だった

桃色の花弁が、雨のように流れていく

俺の手は幹に触れた

ゴツゴツとした手触りが心地いい

儚く散ってく桜の花は、床に落ちても輝きは消えない

懐かしい

昔はよくあいつらと桜を眺めたものだ

「銀時…」

小さく消えそうな声

呼ばれた名に俺は顔をあげる

「銀時」

今度ははっきりと

振り向いた先には忘れもしない人

「あ…」

松陽先生が微笑んでいた

「銀時」

柔らかく包むように、先生は俺の名を呼ぶ

俺は驚きで、開いた口からは弱々しい息しか漏れない

それでも俺は、松陽先生の名前を呼ぼうと必死だった

「せ…ん……せ…。先生…っ!」

やっと絞り出した声

なのに

先生はその声と共に崩れ去った

「先生…?」

先生の姿は消え、黒の世界は、やがて灰色の空と紅い地面を写し出す

足元には、先程まで生きていたのだろう、生温い侍の肉体が横たわっている

後ろの桜は無惨にも燃え尽き、枝が散らばっていた


俺の頭の中で浮かぶ一つの事件

攘夷戦争

俺は過去の記憶を見ている?


すると、いきなり足下の侍の屍が動き始め

俺の足をつかんだ

「っはなせ」

俺はその屍を振りほどき、走った

後ろを見れば、血だらけの天人や侍が俺を追いかける

何度も横たわる屍に躓きそうになりがらも、俺は走った

(なんなんだっ…?ここは…、俺は…!)

思考が頭を巡る

ぐるぐるぐるぐる

何度考えても、答えはない

俺は

俺は?

ガラガラガラ

「っあ!」

足場が崩れて行く

腕は宙を掻いて、何も掴めない

俺は、闇の中へ堕ちていった
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