Fortuna
□Act.0
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・・・・まぶしい。
「・・・ん?」
ぼんやりと覚醒した体を持ち上げて、窓をみた。
眩しいのは、さっき出たばかりの朝日のせいだったみたいだ。
もう、朝・・・今日から学校だ・・・・。
タオルケットを適当に畳んで横に置くと、顔を洗いに洗面所へ向かった。
洗面所で顔を洗うと、タオルで水気を拭いた。
ふと、三面鏡にもなる鏡の方を向いた。
「・・・え?」
腰より少し下位まで伸びたの髪
それと同じ色の目から、いきなり水が溢れてきた。
頬を伝って堕ち、画面の外へ消えていく。
「おっかしいな・・・」
泣きたい気分でもないのに。
と不思議がりながらも、手に持つタオルで頬に出来た筋をゴシゴシと消した。
黒色のゴムを二本とって慣れた手つきで髪を高い位置で2つにくくり分けると、もう一度鏡の虚像を見て洗面所から出ていった。
床に出来た水滴が、やけに光って見えていたのは、誰も知らない。
大事な記憶を忘れていった事さえ忘れて
彼女は日常へと飛込んでいく。
振り返る事も、考え直す事さえもせず
只々、痛い程の光に
のめり込んでいった。
(痛さを忘れた彼女には、それが苦痛とさえ感じないけれど)
(遺された雫は、只々それを哀れんだ)
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