《小説》『相手は王子?』
□いち
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『相手は王子?』
体育館に響くバスケットボールのバウンド音にかけ声、歓声は教師の笛の音が響くのと共に終わる…ハズだった。
『あぶないっ!!』
その声を最後にオレの本日、3現目の体育の授業はあっけなく終わった。
目を覚ますと見慣れた白い天井に白いカーテンに囲まれていた。
「…保健室か…。情けねー…」
「全くだ」
「ぅおっ。お前!?盗み聞きするな!」
顔を横に向けると、そこには保健の先生じゃなくて隣のクラスの神谷がいた。
「っうか、何でお前がいるんだよ?」
「ボールが当たって気絶した観月を運んだのが俺だから。起きて一人だと寂しいだろ」
「いや、寂しくないし。授業サボんなよ」
「相変わらず冷たいな。人が好意で看病してやったのにな。」
左口角だけを上げ笑う。
看病って大げさだ。
神谷とは同じクラスになったことはないけど、かなり苦手なタイプ。
ちょっとチビな俺に比べ細身なくせに軽く175cmはあるし、顔もキレイ系のかっこいい。
運動も出来て、おまけに勉強も出来ちゃうらしい。
うちのクラスの女子がよく、こいつの話題で盛り上がっている。
そんなこんなで、俺にないモノを持っている神谷が苦手。
「そんなにかわいい顔で見つめて…喰われたいのかオレに?」
「見てねーよ!っうか、かわいいとか言うな!」
あと、こいつの発言は俺のコンプレックスをことごとく突いてくる。
うん。苦手というより嫌いだ。
「ククッ。怒る元気あるなら平気だな。」
「は?」
ガラッ…。シャッ。
「あら、観月。目が覚めたのね?」
「さっちゃん!」
「うん。顔色もいいし、バイタル的にも問題なさそうね。でも、今日は念のために帰って寝なさい。」
「えっ。帰っていいの♪」
さっちゃんこと保健室の先生、斉藤美喜の言葉にテンションが一気に上がる。
「神谷君と一緒にね」
可愛い声、可愛い笑顔で発せられた言葉は、一気に上がっていた俺のテンションをどん底に突き落とした。
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