POEM

□理由
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ずっとくだらないと思っていた
甘美な響きはすべて
歓楽街のネオンに解けて消えてしまう
大して綺麗でないものでも嬌声と淡い光に当てられて美しく光る


俺が背を向けるたび 追いかけてきはしないのに
今にも泣き出しそうな顔をする
それは俺をぞくっとさせるには十分すぎるほどの表情で
くだらないと思いながらも戯れる時に囚われる

自分が最も愛したのはお前なのだからと
総てを奉げたのだから総てを与えてほしいと
幼稚な言葉 稚拙な口付け
まるで駄々をこねるガキのように
震えながら抱きついて
懇願する姿は
浅ましく滑稽で馬鹿らしいとも思うのに
しゃくりあげる声が俺の歩調を乱していく
頬を伝う涙も飲み干してしまいたいと思う

ずっと馬鹿にしてきた
恋や愛などなどくだらないと思ってた
互いに依存するだけ
ほかに執着の目が向けばそれはぷっつり切れてしまう
そんなに必死でつなぎとめる姿が不思議でたまらなかった
そんなに必死に求められる理由を俺は自分の中に見つけられないでいた

そっと伸ばした手
眉一つ動かない俺の顔を不安げに見つめるその顔にだって喉が鳴る
おずおずと絡んでくる指は強く握ると解けていき
手を緩めれば慌てて握り返す
放さないでと言われているようで

初めて愛しいと思った

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