+書庫2+
□【横暴か、熱か】
1ページ/4ページ
畦道に差し掛かろうと、馬を降り手綱を引いて歩く。
時折すれ違う民に挨拶をしながら一里程歩けば、すぐ前に民とは違った風貌の者が待ち構えていた。
『遅かったな。』
暫く待っていたのか、直ぐに手拭いを渡され堂々と佇む城の門を開ける。
『越後を過ぎたところから、大雨に見舞われまして。すみませぬ。』
含み笑いを放つ顔は、少しばかり疲労の色が見える。
大雨の中、急いで来たのか草履と足袋は泥にまみれていた。
『湯浴みを用意させよう。』
濡れた市傘と包みを幸村から預かり、小十郎は侍女に湯浴みの準備を任せた。
『政宗殿はどうなされましたか?』
湯の準備が整うまで、と幸村は小十郎の案内で客間に招かれた。
『主殿で待っている。』
予定より三日も遅れてしまったのだから、拗ねているのだろう。
と小十郎は述べるが、目は決して幸村を見ようとはしない。
『そうですか。』
大方、幸村が遅いものだから我慢が利かず女妾とまぐわっているのだろう。
まるで子供のようだ、と幸村は黙って出された茶を啜った。