真の願い

□第22話β 穏やかなる日常を
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「このあと買い物行かなきゃいけないからもう帰るね!」

片付けを終えると、れなは荷物を手に取った。
唯世に別れを告げると、なぎひこと空海と3人になった。

「買い物って何買うんだ?」
「食材。こっち戻ってきたばっかりで冷蔵庫ほとんど空っぽなの。昨日は簡単な買い物しかしなかったから」

気恥ずかしくなり、思わず頬を掻く。
空海はへーと返事をすると、少し間を置いて口を開いた。

「…それなら、一緒に行くか?荷物重くなるだろ?」
「え、そんな!悪いよ」
「いいからいいから。こんなときの男手だ。使っとけ!」
「ふふっ。なにそれ。…それなら、お願いしようかな?」

空海の言い方に思わず笑みが零れる。
折角の厚意なので甘えることにすると、空海は嬉しそうに笑った。
2人で買い物に行くことに決まり分かれ道に来ると、なぎひこが僕はこれでと言って去っていった。

「あ、なあ。明日って空いてるか?」

2人きりでスーパーへと向かっていると、ふと空海が言った。

「明日?んー、部屋の片付けが少し残ってるくらいだから…うん。空いてるよ」
「そっか。朝は用事があるから無理なんだけどさ…よかったら午後久しぶりに遊びに行かないか?さっき遊びに行こうって行ったろ?」

遊びのお誘い。
そういえば空海とは長い間遊びに行っていない。
久しぶりに一緒に遊びたいかもしれない。

「本当?うん、行きたい!」
「決まり!じゃあどっか行きたいとこあったら考えといてくれ!」
「うん、わかった!」

れなは笑顔で答えると空海もニカッと笑い返してくれた。




数日分の食材を買い込むと、買い物袋3つ分になった。
空海が2つ、れなが1つを持って道を歩く。

「あ、この辺でいいよ。ここまで持ってくれてありがとう」

分かれ道まで来ると、れなは言った。
しかし、対する空海は不思議そうな顔をした。

「この3つを1人で持って帰る気か?家まで持ってくって」
「そんな!流石に悪いよ!」
「何を今更。ここまで来たら最後までお供しますよお嬢様」
「お嬢様って…ふふっ。なにそれ」
「俺は元Jチェアだからな。誰かにお仕えするのが真髄なんだよ」

突然の変な呼び方に思わず笑みが零れる。
対する空海は至極当然のように言った。

お嬢様と呼ばれるとなんだか恥ずかしい。
けれど空海に大切に扱ってもらえているようで嬉しくなる。

「それじゃあ…お願いします」
「そこはついて参れ、で」
「ふふっ。ではついて参れ、空海」
「はっ。仰せのままに」

なんだか面白い。
2人で悪ふざけをして笑いあった。
空海といると笑顔が絶えない。本当に楽しい。
いつまででもこうして2人で笑い合っていたい。
心の底からそう思った。

家に到着すると、渋る空海を説得して2人で料理をして夕食をとった。
明日の待ち合わせを決めると、空海は家へ帰っていった。
目的地は最近このあたりにできたという水族館に決まった。
久しぶりの空海とのデート。明日が楽しみだ。
れなは幸せな気持ちで眠りについた。
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