真の願い

□第22話α 激動の日々を
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「部屋の片付けがあるから先に帰らせてもらうね!」

片付けを終えると、れなは荷物を手に取った。

「うん、また新学期にね神谷さん」

唯世に別れを告げ、途中までなぎひこや空海と帰り、分かれ道まで来ると2人と別れた。
道を歩きながら、この後の整理のことを考え、少し億劫になる。


「やっぱりもう少し皆と喋っていたかったなぁ…」

とはいえいつかはしなければならないことだ。
早めに終えた方がいいだろう。
はぁ…とため息を吐くと、何の気なしに空中を見た。

「ん…?」

また雪が降り出しそうな天気。
雲行きが怪しいな、と考えた矢先、視界に何かが見えた。
黒い、何か。どこかで見たことがある。

「…幾斗?」

建物から建物へ、人通りの少ない方へ身軽に移動する幾斗の姿が目に入る。

「…なにしてるんだろ?」
「追ってみる?」
「…なんかせっぱつまって見えるよね。行ってみようか」
「オッケー!」

ルナにキャラチェンジをして身体能力をあげ、幾斗が消えていった方向へと走っていく。






辿り着いたのは人気のない路地裏。
しゅごキャラたちのなんとなくレーダーを使ってヨルの気配を探った。
しゅごキャラたち曰くレーダーの反応がよくなってきたという。近づいているようだ。

「待てー!」
「ちょろちょろと…泥棒猫め…!」

近づくにつれ、そんな声が聞こえてくる。
黒づくめの男たち数名がたむろしているのが見える。
どうやら幾斗を探しているようだ。

「…これもしかして、結構まずいんじゃ…?」

影に身を潜めながら様子を伺う。
何故幾斗はこんな怪しい連中に追われているのだろうか。一体何をしたのだろう。

「誰だ!」

黒づくめの連中の1人がれなの気配に気が付き、こちらに駆け寄ってくる。

「やばっ…!」

自分が追われては本末転倒だ。
体を反転させて走って逃げる。
路地を走っていると反対側からも誰かが来た。

「捕まえろ!」

絶体絶命…!と思われたが、すぐ横に抜け道があることに気が付いた。
れなは抜け道へと急いで歩を進めた。
後ろから追手が迫ってくる。

道を抜けてまた道を曲がると、急に横から腕が引っ張られ、体が宙に浮いた。
驚いて声をあげようとしたら、口を手で覆われた。
目を見開いて手を塞いだ正体を確かめると、そこにいたのは闇に身を潜める幾斗だった。
口を手で塞がれながらも名を呼ぼうとすると、幾斗にしっ!と諌められた。

身を縮めて暗い空間でじっと固まる。
幾斗の言うとおり静かにしていると、目の少し前を黒づくめの男たちが通り過ぎていく。

「くそっ!どこへ逃げた!」
「今の女もあの泥棒猫もまだ近くにいるはずだ!探せ!」

そんな声が耳をかすめるも、その場でじっとしていると男たちの足音がしなくなった。
どうやらこの近くにはいないと思い、他の場所へ移動したようだ。
それを確認すると、幾斗はようやくれなの口から手を離し、安心したようにため息を吐いた。

「なんでお前がこんなところにいるんだ」
「なんでって幾斗の姿が見えたから追いかけて…。幾斗こそなんであんな連中に追われてるの!?」
「…とりあえず話は後だ。ここから出るぞ」

幾斗に先導され、薄暗い空間から出ると路地から出た。
人通りの多い道へ出ると、そこで幾斗に話を聞いた。

要約すると、イースターに今まで奪われていたバイオリンを取り返したのだという。
男たちに追われていることから、どうやらあまり穏やかでない方法で取り戻したようだ。

「…幾斗、大丈夫?」

話を聞き終えると、れなはそう言った。
先程から幾斗の様子がおかしい。
体力があるはずなのにずっと息があがっているし、顔色も良くない。

「…大丈夫だ」
「そうは見えないよ」

心配して頬に触れると、幾斗は反抗せず手にすり寄ってきた。
その頬はほんのり熱を帯びているようだった。

「目的のバイオリンは取り返せたし、すぐに家に帰る。だから心配するな」
「お家に…うん。ゆっくり休んでね」
「俺は追われてる身だから送ってやることはできない。…お前も、気を付けて帰れ」
「うん、心配ありがとう。皆がついてるから大丈夫だよ」

6人のしゅごキャラたちを振り返る。
どの子も頼りになる子たちだ。
この子たちがいる限り、きっと大丈夫だろう。

「そうか」

幾斗は満足そうに笑った。
その表情はどこか優しげで、れなは頬が熱くなるのを感じた。

「それじゃあな」
「あ、うん。またね!」

幾斗は背を向けて歩き出し、振り向かないまま手を挙げて挨拶してくれた。
れなも幾斗は逆の方向へと歩き始めた。
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