真の願い

□第21話 計画の終焉
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「海里おかえり!」
「もー心配したんだから!!」

×たまとの戦いが終わって、海里は自分が間違っていたこと、ガーディアンに復帰することを話してくれた。
海里のガーディアン復帰を皆で心から祝福し、喜び合った。

(よかった…海里が帰ってきてくれて)

あむも、ガーディアンの皆も心の底から喜んだ。
ひとしきり大騒ぎしたのち、海里が口を開いた。

「みなさんに、イースターが企んでいる計画について、お話しなければならないことがあります。
……ですがその前に、一つ伝えておきたいことがあります」

海里のその言葉に、ガーディアン全員が何事かと身構えた。

「実は…オールマイティのことで一つ」
「オールマイティ?もしかして、れなたんのこと?」

オールマイティ。
それはれなのガーディアン内での役職だ。

(どうしてここでれなの名前が…?)

あむは海里の言葉に疑問を抱いた。
海里は少し間を置いてから、ゆっくりと口を開いた

「はい。実は彼女は今…」
((ごめんね。そこまでだよ))

シュッ

「…!!」
「…海里?」

突然、風を切る音が響いた。
それはあまりに小さな音だったが、確かに海里の耳に届いた。

「ジョーカー、危ない!!!」
「え?」
「キャラなり サムライソウル!!!」

スパンッ

海里が瞬時にキャラなりをし、あむの前に立ち塞がって、日本刀であむに向かっていた何かをはじいた。

((へぇ…やるじゃん))

「な…なに?」
「今何が起こったんだ!?」
「みんな!急いでキャラなりを!!!」

ガーディアンは突然の出来事に混乱した。
唯一冷静な海里だけがガーディアンに指示を出した。

((的確だね。でも…遅い!))

シュッ…タンッ
シュッ…タンッ
シュッ…タンッ

しかし、その混乱の隙をつくように、“何か”はガーディアンたちに向かって次々と放たれた。

「う…!」
「いたっ…!?」
「な、にが起きたのぉお!?!?」

“何か”は、りま、唯世、ややの三人にヒットしたらしい。
三人は体のバランスを崩して倒れた。

「なっ…!みんな!?」

あむが驚いて三人のほうを向いてしまった。

((戦闘中によそ見しちゃだめだよ。あむ))

「日奈森さん…!だめだっ…前を見て…!!!」

シュッ

あむに向けて“何か”は放たれた。

「ジョーカー!!」

スパンッ

再び、あむに向けられた“何か”を海里が切り捨てた。

「あ…ありが…」
「まだ油断はしてはいけません!まだ来ますよ!!」

感謝の言葉すら最後まで聞けず、海里はあむに立て直しを指示した。

シュッシュッシュッシュッシュッシュッ

何発もの風切り音が響いた。

「ジョーカー!!」
「大丈夫!いけるよ!キャラなり アミュレットハート!!!」

スパンッスパンッスパンッスパンッスパンッスパン!!!!

海里は日本刀で、あむはハートロッドで、向かってくる“何か”をはじいた。
“何か”の嵐がひとしきり降り注いだ後、海里は目だけを動かして床に散った“何か”を見た。

(…銃弾…!?この形状…まさかっ…!?)

海里は、何かに気づいた。

(しかし…仮にそうだとしても、なぜ彼女がここに…!?)

   ・・・
彼女は逃げたはずだ。
        ・・・・・・・
そう。つい先ほどイースターの皆とともに。

(彼女の真意はわからない…。しかし、今は…そんなことを考えている場合ではない!!)
「ジョーカー!!」

今はとにかくこの攻撃から逃れなくてはならない。

「この攻撃…この銃弾は舞台上…それも照明部分から降り注いでいるようです!
そこに狙撃者がいるはずです!!!」
「舞台の上!?わ、わかった!!!」

あむはハートロッドを構えた。
舞台のライトは全て消され、真っ暗。何も見えない。

(さっきまでの攻撃を考えれば…。あそこ!!!)

舞台を睨み付け、狙いを定めた。

「いっ…けぇぇえええええ!!!!!」

大きく振りかぶって、それを舞台上部目がけて投げた。

バァァアアアアンッ

大きな音を立てて舞台上部器具へぶつかった。

ドシャッガシャァアンッ

その拍子に派手な音を立てて器具が舞台へと落ちていった。

「し…しまったぁああ!!!き、機械壊しちゃった…!!!!」

ブーメランのように投げて帰ってきたハートロッドを手に、あむは嘆いた。
それに対して海里は落ち着き払っていた。

「大丈夫です。ジョーカー。あとでリメイクハニーで直しましょう」
「そ、そっか…!それがあったね!!!よ、よかったぁああ…」

あむは心底安心したらしい。
胸に手をあて、大きなため息をついた。

「そうだ!唯世くんたちは!?」

あむは舞台に背を向け、後ろに倒れた三人の様子を見た。

「だ、いじょうぶ…。けがは、してない、よ…!」

弱弱しい声の唯世がそう告げた。

「でも、攻撃が当たって…!!」

あむは三人の傍に膝をつき、顔色を見た。
三人とも、別段顔色が悪いわけではない。
大事には至らなかったようだ。

しかし、心配なものは心配だ。

「あむちー、大丈夫。痛くはないよ…!ただ、すごく…」

同じく弱弱しげな声でややが答えた。
ややの目は、どこかうつらうつらしている。
首は、かくんっかくんっとひっきりなしに動く。

「そう、ね…」

今度はりまが口を開いた。
りまの症状も、二人と同じだ。

「「「すごく、眠い…」」」

何度も目を閉じそうになりながら、閉じるたびに開く。
三人は眠気と必死に戦っているように見えた。

「眠い…?」

攻撃を受けた三人が三人とも、睡眠欲に駆られている。
それはつまり。

「催眠効果の銃弾…!」

先ほどの攻撃は、催眠効果があったと言える。



「だ〜いせーいか〜〜〜い!!!」



突然、誰かの声がライブハウスに響いた。

(この声…まさか…!!)

聞きなれた声。
     ・・
だが、なぜ彼女がここに…!?



カツンッ…カツンッ…

ゆっくりとした足音。
それが真っ暗な舞台の方から聞こえてくる。
照明の当たるやや明るめのこの空間に、やってくる。

足が、見えた。
ブラウンの、ブーツ。

服が、見えた。
デニムのショートパンツと黒のチューブトップ。
ブラウンのマント、赤いスカーフ。

髪が、見えた。
前半分が赤く、後ろは黒。

頭が、見えた。
ブラウンの、カウボーイハット。

顔が、見えた。
久しぶりに見る、大事な親友。

最後に会った時と変わらない笑顔で彼女は言った。

「久しぶりだね。あむ」

「…れな…!!!」



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