真の願い

□第18章 お悩み相談
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インターフォンを鳴らしてから暫くすると、トタトタと足音が聞こえてきた。

「どちら様でございますか?」

現れたのは、お婆さん。
なでしこのお婆さんだろうか。

「あの。私、なでしこの友達で…。なでしこ今お家にいますか?」
「なぎ…いえ、なでしこお嬢様のお友達でしたか!」

お婆さんは、パッと愛想よく微笑んだ。
しかし、それからすぐに申し訳なさそうな表情へと変わってしまった。

「申し訳ありませんが、本日は…」

言いにくそうにぶつぶつと呟くお婆さん。
今日はなでしこは忙しいのだろうか。

「そうですか…。わかりま…」
「ばあや、誰かいらしたの?」

丁重に返事をしているところに、誰かがやってきた。
長い黒髪の綺麗な…。

「なでしこ?」

なでしこが。

「(ううん、違う…)」

そこにいるのは、なでしこではない。
なでしこにそっくりな、男の子だ。

「あれ、れなちゃん?」
「え?」

会ったこともないはずなのに、その男の子は自分の名前を呼んだ。

「(えっと…この人…誰だっけ…?)」

そもそも会ったことがあるかすら不明だ。
否、この人とは初対面だ。

「もしかしてなでしこに用事があったの?」
「あの、えっと…」

初対面の人にはなかなか馴染めない性分のれな。
返事があまりうまくできない。
言葉を詰まらせたのを見て、自分の質問が正解だったことを知ったのか、男の子は言葉を続けた。

「でもごめんね。今日はなでしこ、どうしても外せない用があって」
「そ、そうナんですカ…」

なんとか返事をしたものの、言葉がカタコトだ。

「でも、僕なら空いてるよ」
「へ?」

思わぬ申し出に戸惑ってしまうれな。
初対面の人にそんなことを言われてもイマイチ了承しかねる。

「なぎひこお坊ちゃま!園遊会の方は…」

男の子の名前は、なぎひこ、というらしい。
やはり、聞いたことがない。

「いいでしょ?練習もリハも一通り終えたんだし」

その男の子、なぎひこはれなの方を盗み見るとお婆さんに言った。

「それとも、なでしこの大事なお友達を無下に追い返すつもり?」
「(なでしこの、大事なお友達…!)」

なんだか心の中が暖かくなってくる。
きっと嬉しいのだ。
友達のいなかった自分に、『大事な友達』ができたこと。
それがとても嬉しいのだ。

「ですが…しかし…」

お婆さんはなぎひこの提案に戸惑っているよう。

「大丈夫。園遊会には間に合わせるから」
「…わかりました。必ず時間までには…」
「わかってるよ、ばあや」

なぎひこはお婆さんを説得し、れなの方へ振り返った。

「れなちゃん、ついてきて」
「え?あ、あの…」

手を差し出されて、口では断りの言葉を紡ごうとしているのに、手は自然とその手を掴んでしまった。

「客間に案内するよ」
「え、あの、いや…だから…!」

手を引っ張られ、強制的に連れて行かれる。
断ろうにも、れなはうまく言葉を紡げずあたふたしているうちに、結局気付けば客間に到着していた。

「(お、恐るべし、なぎひこさん…)」

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