Mental Hospital In Back
 

 
――カランコロン――



『いらっしゃいませ』

軽く店内を見渡す。
もっと人がいると思ったんだが中には店員が一人とみずほらしい服をきた男が一人だけ。なんだ此処

『ビール一つくれ』

『かしこまりました』

俺は適当に席を見つけるとそこに座った。

『ビールです、どうぞ。』

そういってでてきたビールは細長いグラスに入って俺の目の前に置かれた。
ふう・・・美味い。が、普通のビールだ。こんなかっこつけて出すようなモンじゃないだろう。
それに

『なんだこのいかにも入るなといっているかのようなは。俺みたいなリストラサラリーマンに用はねえってか。』

つい言葉が漏れてしまう。くそ

『そう思ってしまったのならそれは申し訳ありませんでした。しかし、口答えするようですが入ってきたじゃないですか。その重い扉を開けてお客様は。』

店員が言う。

『それはそうだが・・・。これじゃまるで客を選んでるじゃないか』

と、いきなり横から声がする。さっきのだ。

『せっかく来たんだ、もっと楽しんだ方がいいぞ。リストラされたんなら尚更・・な。』

ちょっとくぐもった声で男は言う。そういやコイツも服装からしてワケアリか。それも深そうだ。コイツもこの扉をくぐってきたのか・・。

『そうだ、手品見せてやろうか。昔ちょっとかじってたことがあってね。』

そういって男はカウンターに広げてあったトランプを集め俺の横の席に座った。
様子から見るとさっきまでこの店員にやってたのか。

『この人、こう見えてかなり凄いですよ』

『こう見えてって何だよマスター』

『ハハ、冗談ですよ冗談。』

小さな空間に小さな笑いが起こった。つられて俺も笑ってしまった。
俺なんか家に帰ってもコンビニの弁当と冷たい布団が待ってるだけだ。笑いの欠片もねえ
暖かい・・、ふと羨ましく思う。俺もこの空間に入りたいと思った。

『店員・・いや、マスター、あれを一つ。ほらなんていったかな、さくらんぼがグラスの上に乗っかってる奴だよ』

『マティーニですね。かしこまりました。』

どうやらこの小さな空間には傷物ばかりが集まるみたいだ。俺やこの男みたいに。
入り口のあの重い扉をあけて、戦々恐々と入っていくのだろう。
そうして皆この空間に癒されて嬉々として帰っていく。
それで俺もその一人ということか。 
俺を操ろうなんていい度胸だな、まあいっか。

『じゃあ気を取り直して。やっぱり手品といったらこの台詞を言わなくてはなりませんね。』




『ここに一組のトランプがあります。』


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最終更新日 2008/04/28




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