メリーバッドエンド

□捨てる事の無い貴方達
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ちひろの家に着いて、直ぐに家のチャイムが鳴る。
今は、忍足君も居ないし、ちひろがバタバタと玄関へと歩き出す。
着いていかない仁王君。
まるで、誰が来たか知ってたみたいに。


「・・・なんさ?凛は兎も角、なんでこのクソ白髪が居るんさ。」


「まぁまぁまぁ、話さんかったらええやん?今日はケーキパーティーや!桜にも食べれるヤツ買ってくるから。」


「・・・買ってくる、ってことは、後一人、一緒に空気も吸いたくないやつが来るんさね。帰る。」


「まって!最近桜と遊んでなかったから、寂しくて、帰るん?ほんまに・・・?」


「うっ・・・!」

あざといなぁ、ちひろ。
ちひろの泣き落としに桜が折れる。
仁王君から一番遠い所に桜は、腰を下ろす。
ソファーに座ってた平古場君が桜の隣へと移動した。


「でも、皆で集まるの久しぶりだね。」


「そーさねぇ。皆、ってかなんで光がおんのか知らんけど。金太郎は来てないんさ?」


「こっちに居るんは、千歳さんと謙也さんだけっす。」


「ふーん。」

興味無さそうな名前に桜は、隣にいる平古場君の頭を撫でた。
止めるなら、今のうちなのに、止めれない。
いや、私には止める権利なんて無いのないのかも。


「久しぶりやっさー!桜。」


「凛もね。いじんかいしてた?(元気に)」


「おう!桜は?」


「アタシもまぁ、元気っちゃ元気よ。最近は講義も無いし、暇してた。」

たわいも無い話をしてると、もう一度チャイムが鳴る。
勝手に入ってこないとこを見ると、丸井君だと思うけど・・・仁王君も、ちひろの腰も上がらない。


「ちひろ、誰か来たよ?」


「美夜子出てきてー!新聞勧誘なら断ってやー!」


「もうっ!分かったよ。」


「俺も行くわ。」

光が玄関まで着いてきてくれた。
扉を開けると、案の定真っ赤な髪。
驚いた顔の丸井君。
私と光の顔を一瞥して靴を揃えて中へと入って行った。


「・・・ブン太ぁ?!」


「桜?!てか凛?!なんでいるんだよぃ?!」


「こっちのセリフやっさー!」


「俺は、仁王に呼ばれたんだよ。新しい格ゲーが手に入ったから赤也倒す為に貸したるからって。仁王倒したら美味いケーキ奢ってくれるって。」


「ちっ、クソ白髪。」


「まぁまぁまぁ、皆で集まる楽しい会じゃない?」


「ゆーけどよ、日吉はどーしたんだよぃ?まだ?」


「・・・あ、それは・・・若は今、修行に行ってるの。」


「またか。まー、食えるケーキが一個増えたってことか!もうけ!」

これから起こるコトを知らずに、桜と丸井君はニコニコと笑いあう。
桜を挟んで、平古場君と丸井君が座る。
かちゃり。小さな音が玄関から聞こえた気がした。


「おかえり、侑士。あった?」


「ちょ、ちひろ・・・」
「ただいま、ちひろ。あったで。新しい格ゲーと人数分のコントローラーと、めっちゃ美味いケーキ。」


「ん?どした?美夜子。」


「あ、桜、なんでもないの。ゆ、夕ご飯どうするのかなって思って!」


「夕飯俺食ってねぇ!」


「アタシもー。」


「わんもー。」


「分かっとるがな。作るからちょっと待っとき。」

忍足君は両手に携えてる袋の片方をちひろの後ろに置いて、もう片方を持ってキッチンへと向かった。
いつの間に仁王君と忍足君、連絡取ってたんだろう。
携帯触ってる素振りも無かったし。


「私も手伝うよ!この人数じゃ大変でしょ、忍足君。」


「せやな、財前も頼むわ。」


「ういーっす。」

三人でキッチンへと入る。
仁王君の家より少し狭いキッチン。
袋の中身は透明な液体に入った袋何個かと、何種類かの食材と、お酒。


「忍足ー!飯はなんだー!」


「回鍋肉と、天津飯や。直ぐに作るからゲームでもして遊んどき。財前、米炊き頼めるか?此処に、米あるから。」


「了解っす、結構炊いた方がいいっすよね?」


「八合くらい炊いとってくれ。」


「りょーかいっす。」


「包丁二本あるから、美夜子は野菜切るのてつどうてくれるか?」


「分かった!」

ちひろ達は、欠けちゃ駄目なんだね。
忍足君が、仁王君が、千歳君が居るから、ちひろの生活が成り立ってる。
数日しか密着して無かったけど、それだけは良く分かった。
それじゃあ、四人で一緒に居るしかないんだね。
他の選択肢なんて、最初から無かったのね。


「おい、仁王!ゲームあけてくれよぃ!待ってる間やろーぜぃ!」


「後で相手にしちゃるきに、俺はちひろに構ってもらうのに、ちと忙しいけん、平古場とやっときんしゃい。」


「構うの間違いだろぃ。えー、凛弱ぇからヤダよ。」


「ブン太ぁ!言ったさね!このチビ!」


「チビじゃねぇ!」


「こら、二人とも喧嘩すんな。ブン太、取り敢えず凛ともやったり?アタシもするから。」


「ぶー。まーいいけどよぃ。」

文句垂れながらカチャカチャと丸井君がゲームを設置し出す。
忍足君の手元にはジンジャエールと、透明な液体。
え?もう入れるの?って、私が思った事を分かったみたいで、「遅効性」それだけ言ってジンジャエールに透明な液体を混ぜて、コップに注ぐ。


「伊達。」


「なんや。」


「酒ある?」


「こんな時間からもう呑むんか?あるけど、ええ大人にならんでー。」


「あれば焼酎くれ。」


「あ、わんもわんもー!」


「あるけど、炭酸水は無いから、ジンジャエールか水割りしかないで。」


「じゃあ、ジンジャエールで割って。半々で。」


「はいはい。」


「珍しいな?桜。」


「こんな空間、呑まずにいられるかっつーの!!」


「あはは、飲み過ぎないでね?桜。」

忍足君がついだお酒を人数分机へ持っていく。
ちひろも、仁王君のも勿論お酒。・・・媚薬入りの。


「どうだ?凛。負けたら一気飲みってのは。」


「上等やっさー!」


「ピヨピヨ。待ち。」

今までちひろの首元に顔を埋めてた人から声が上がる。
しまった、という顔した丸井君。


「げ、まっ、待てよぃ!俺は凛と・・・。」


「さて、やるか、ブン太。俺と勝負じゃ。負けたら、呑めよ?男なら、惚れた女の前で言った言葉下げんよなぁ?」


「カッコつけやがって!こんの、詐欺師!!くっそ、やってやるよぃ!!」


「でーじょーぶか、ブン太。やー、わったーらの中で一番酒弱いのに。」


「俺が潰れたら、頼んだ、二人とも!」


「ぬーでアタシも入ってるさ。」


「三人が交互に挑んでもいいぜよ。どーせ俺が負ける訳ないきに。」


「ブン太、酒なら任せろ。このクソ野郎潰せ。」


「任せろぃ!!!」

無謀な挑戦が始まってしまった。
アレが始まる前に、三人とも酔い潰れちゃったらどうするんだろう・・・。
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