メリーバッドエンド

□捨てる事の無い貴方達
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目を覚ますと、半裸の光が同じ布団で、隣ですやすや寝息を立てて寝てた。
あーあ、やっちゃった。
これからどうなるんだろう。
ちひろもこんな気持ちだったのかな。


ピーンポーン。
仁王君家のチャイムが鳴る。
・・・もしかして若?
少し冷や汗をかきながら、パジャマをきちんと着て扉を開けると、忍足君も出て来た。


「おや、おはようさん。」


「おはよう、忍足君。」


「昨日は楽しめたか?」


「・・・若よりしちゃったよ。」


「それは俺も負けんようにせなあかんなぁ。」

危険な会話をしながら一階へと歩みを進める。
ちひろが居ないところを見ると、まだ仁王君と夢の中なんだろうな。
いつだって、出会った時からちひろ達のお世話をするのは忍足君。
玄関の戸をあけると、意外なお客様。


「ちひろは?」


「えーっと、まだ寝てると思うけど・・・何でここに??」


「ちひろん家に行ったら居なかった。あがんぞ。」


「ちょい待てや。自分がちひろになんの用やねん。約束しとんかいな。」


「約束やした。」


「あ、おい、ちょい待てや!」

大きな荷物を携えて、ズカズカと仁王君の家へと上がっていく。
何回か来たことがあるのかな?
先ずはリビング、ちひろが居ないとか分かったら直ぐに、二階へ走っていった。


「ちひろ!!!」


「・・・ん・・・じゃ・・・うっさい、のぅ。さ、いあく、やけん・・・。寝起き一番、聞いた声が、ちひろじゃなか。今日の、運勢は、最悪。クソ侑士、ちゃんとしろや。」

上半身裸の仁王君が、目を覚まして、ぶつくさ呟いて忍足君をキツく睨みながら、ドスの効いた声で、謎の八つ当たりして、体を起こしてベッドの壁に背中を預けて髪の毛をかきあげながら、もう片方の手でちひろの頭を撫でてる。
布団を退けないってことは、多分下も着てないんじゃないんかな。


「ちひろ!!」


「五月蝿い。ちひろが朝一番聞く声も俺じゃ。それ以上口を開くと沈ませんぞクズ。」


「わっさいびーん。(ごめん)」


「ちひろ・・・。」

仁王君が隣で眠るちひろの額に口付けながら優しく頭を撫でながら、ゆさゆさ揺さぶって起こす。
仁王君・・・ちひろだけには、ほんといつもめちゃくちゃ甘い声、態度・・・。素敵過ぎて憧れちゃうなぁ・・・。


「ん・・・まさはる・・・?お、はよ・・・にゃに・・・さっき寝たばっか、やからちょっと、から、だ・・・うごかんから、まって・・・。」


「おはようさん、俺のちひろ。寝起きもほんまにいつも、可愛ええのぅ・・・。客じゃ。」


「おきゃく?」


「ちひろ!」


「んー・・・なぁに、ん?凛ちゃん?」


「お願いさ。わんの子作り、手伝ってくれ!」

それだけ言うと、平古場君は頭を下げて、黙りこくった。
途端に、ぎらり、目に光が入る二人。
すっごい目付きで睨んでる・・・。
元々目付き悪い二人だけど、怖すぎる・・・。


「殺るか。」


「任せとけや。完全犯罪したるわ。」


「ちょ、二人とも待ち。凛ちゃん、どないしたん?もうちょい、詳しく話してや。ふぁぁ。」


「ちひろ、待ち!」

話を聞こうと、ちひろはベッドから出ようとする。
それを忍足君が急いで止める。
ベッドの下に落ちていた下着と、パジャマを手にしてちひろの方へと向かう。


「おまんら、向こう向いときんしゃい。」

仁王君の言う通りに、平古場君も私も着替え中のちひろに背を向ける。
OKが出た時には、ベッドに服着た三人がこっち向いて座ってた。


「ほんで、子作りってなに?凛ちゃん。」


「じぇー、わんに見合い話が来てて、ふらふらしてんと、さっさと結婚せぇって言われたんやっし。」


「ほん。まぁ凛ちゃんええとこの子やしな。家継がなあかんねやろ。」


「わんの気持ちは知ってるな?」


「うん。」


「それを見込んで、約束したさ。わんの手伝いしてくれるって。」


「凛ちゃんの手伝いはしたるけど、あたし達に出来るかなぁ。」


「ちょ、ちょっと待って!仁王君!何も言わないの??」


「プピ?何が?」


「平古場君の、子作りって!」


「美夜子もここまで来てもーたならわかるやろ。平古場が言いたいんは、あの女と一発ヤらせろって話やろ。」


「えっ?!あの女って・・・まさか・・・桜??」


「それしか無いじゃろ。コイツが俺等のちひろと子作り頼むわけないじゃろ。」


「いや、丸井を丸め込むのは大丈夫やねん。丸井君、凛ちゃんの事捨てられへんから。でもなぁ、あたしだけじゃどうにも出来へんねん。」


「私にしたみたいに・・・あっ!」


「・・・わんんかいしたじらーんかい?(私にしたみたいに)」


「美夜子も、浮気してん。」


「たーと?」


「財前光。四天宝寺の。」


「あーね。金太郎のとこのか。」


「ちょ、ちょっとちひろ!秘密にしててよ?!」


「凛ちゃんなら大丈夫やって。ぴよしとも交流無いし、会ったとしても興味無いと思うわ。」

焦っていると、重そうな荷物を置いて、平古場君が絨毯に胡座をかく。
大きな溜息をついて、思い詰めた表情で。


「ぬぅ(なに)がだめだ?ちひろは、わんに協力してくれるってゆーたさ。このいなぐ(女)には手ぇ貸したさ?わんにはぬーで?」


「・・・あんな?それはな?美夜子が、雅治のこと、侑士の事を嫌ってないからや。・・・桜はどない?あんないつも毛嫌いしてんのに、先ず雅治ん家来てくれるかもわからんのに。」


「確かに・・・。私は忍足君達のせいでこうなったわけだし。」


「せいってなんやねん。後押ししたっただけやろが。」


「あー。んー。」


「でも、桜って平古場君のことも好きじゃない?普通に相談したりしたら行けるんじゃない?」


「うわ、美夜子、こっちに引きづりこもうとしてるやーん。」


「し、してないよ!」


「・・・ほんまかなぁ。それに、あたしの家やったとしても、協力してくれんのなんて、出来るやなんて、雅治と、侑士や。あの桜がこの二人を前にして素直になるかなぁ。」


「媚薬でもなんでも、盛ってくれ。やから、ちひろをたずねたんさ。」


「媚薬か。あるにはあるけど。それであの女だけで自分は満足なんか?子作りして、丸井捨てて、あいつと結婚して。」

忍足君の言葉に平古場は黙る。
そうだよね、平古場君も幼馴染達が大事だもんね。


「だって、うり以外んかい(それ以外に)・・・。」


「・・・一つだけある。」


「ぬー?」


「桜が、凛ちゃんとも、丸井とも、関係を持って付き合う。それなら、お見合いだって、桜と付き合ってるって言ったら拒めるんちゃう?一時期でも。」


「ぬーやって、それを証明する。おばあ達に。」


「まぁ、動画や写真じゃろうな。」


「桜が、ブン太が許さんさ。」


「やから来たんやろ、あたし達んとこへ。・・・ふふ、乱交パーティーでもする??」


「またちひろに他の男の喘ぎ声聞かせる気か。しかも、ちひろの嫌いな男の。んなもん濡れるもんも濡れんし、イけるもんも、イけんじゃろ。それに、今回は絶対に我慢出来んと、吐くぜよ、俺等。」


「吐いたらちゃんと飲んだるて。蕁麻疹もちひろちゃんが、治したる!・・・皆で、媚薬飲んだらええんちゃん?」


「・・・それ、いいアイデアさ!」


「プピ!聞いとったか、可愛ええちひろちゃん!俺は、丸井の声をちひろに聞かせたくないんじゃ!勿論ちひろの声も聞かせたく無いけん。」


「でも、そんくらいせな桜は堕ちへんで?雅治。」


「・・・そんな目で見なさんな。・・・俺等がちひろのお願いを断れんの知っとう癖に。」

ちひろの一声で、禁忌のパーティーが開かれようとしていた。
・・・ねぇ、これ、私も居るよね?
ちひろに目をやると分かったかのように、にこりと笑われた。
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