メリーバッドエンド
□捨てれなかった貴方達
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結局、その晩も桜達は泊まって、帰ったのは次の日の朝になってしまった。
薬の効果は消えてるから、ただ眠るだけにはなってしもたけど。
怖いなぁ、溜めさせた二人からの視線。
「ほんなら、講義もあるしアタシは帰るから。」
「え、ちょ、寝てる獣二人連れて帰ってよ!」
「ちひろ達が連れてきたんやろ?今連れて帰って講義に支障でたらどうするんさ。それに、アタシが帰れば獣でも何でもなくなるよ。」
「えぇー・・・。」
「これ以上ちひろと話してるとうるさい鬼が起きてきそうやから、ほんまに帰るさよ?」
「えー!桜ー!」
「また、遊びに来るから。な?」
桜があたしの頭へと手を伸ばそうとした時、手はポケットに仕舞われた。
「あれ?桜?どしたん?」
「ほら、野郎共が起きた。文句言われない内にアタシは退散するよ。」
「さっさと消えろや、チビ。」
「もう呼ぶな、糞野郎。」
ヒラヒラと手を振って、桜が部屋を後にした。
珍しく、朝の寝起き悪そうな侑士の声が後ろから聞こえてくる。
もしかして、熟睡出来てたんかなぁ・・・。
侑士、不眠症やから熟睡出来るのほぼ無いからなぁ。
「おはよ、侑士。」
「・・・おはよーさん。ちひろ・・・。」
「何拗ねてんの?」
「分かっとるくせに。」
「ふふ、そんな周り気にするタチやった?」
裸眼の侑士に近付いて頭を撫でてあげると、猫みたいに喉を鳴らして瞳を閉じてる。
侑士と雅治は、雛でもあり犬でもあり猫でもあり・・・狼でもある。
知ってるのは、解ってるのはあたし等で充分や。
「あーあ、身体だっりぃ。」
「使っとかな腐るで、ソレ。」
「腐るか!あーもー桜の手前あんなこと言ったけど、マジ、どーしよ。」
「どないもこうも、してもうたんやから、ちゃんと責任取ったりや。」
「責任ってなんだよい。」
「皆で愛したる責任や。」
「お前らじゃねーんだから、それは無理だっての。」
「なんでぇ?いつもより気持ちよかったはずやで?」
「それは薬のせいで!」
「・・・思い出しても?ソイツはもう薬なんて効いてへんけどなぁ。」
「あう、これは思い出してんじゃねぇ!ただの生理現象だ!」
「ちっさい体で、んなでかいもん携えて。」
「うるせえ。見てんじゃねぇ。俺達がとばっちり受けんだろーが。」
「とばっちりって酷いなぁ?この場合はちひろに行くやと思うけど。」
「あーうん、そーやな。雅治が起きたらそうなりそうやな。」
「お前らのプレイ思い出したら吐き気してきた。愛してるだ何だのうるさすぎんだよ。」
「ひたすら犯されてた丸井に言われたくないわ。」
「犯されてねぇ。犯してた方だ。」
「そうかねぇ?わんから見てもブン太は犯されてる方に入ってたと思うけど。」
「げ、凛こんな早くに起きたの?」
「桜の匂いが無くなっちまったからよー。」
「アイツにはこの空間はもう、限界だったんだろぃ。」
「それでも、堕ちるのは時間の問題やね、丸井君。」
「てめぇ・・・。ちひろ!」
丸井の鋭い睨みがあたしを襲った瞬間、大きな手であたしの視界が真っ暗に塞がれる。
「・・・ほたえなや、ブン太。八つ当たりはお門違いじゃ。本気で嫌がるなら、俺達にすら助けを乞うた筈。おまんらは本当の気持ちを隠して、抗っとるだけじゃ。」
「本当は、皆で愛してやりてぇてのかよぃ。」
「少なくとも横に居る沖縄の問題児にはそう見えたけんのぅ。」
「凛はいいよな。大事なものが一つ増えるんだから。」
「丸井君だってそうや。大事なもん増えるだけやで。」
「っ、んなこと・・・!」
「分かったらさっさと帰りんしゃい。」
「凛ちゃんは別に置いていってもかめへんわ。」
「お前らなんで・・・嫌いな奴の為に・・・そこまで・・・!」
「自分らの為にやった訳ちゃう。上手いこと関係築かせとると、ちひろに絡む時間が減る。ただそれだけの為に俺等は手ぇ貸しただけに過ぎん。」
「・・・なるほどね、はは。ちひろの事独占したいがために、俺達の気持ちまで利用したってことかよぃ。」
「プピーナ。」
「・・・凛、泊まるとこねーんなら、家来てもいいぞ。」
「! 荷物取ったら後で向かうやっし!」
言葉では言わないものの、丸井も認めざるをえなかったらしい。
さて、これで一件落着。
一件だけな。